論文

アメリカの要求に応え続けた
大企業に対する商法・会社法の改正
神戸会国岡

1はじめに

新会社法としてその要綱案が11月中旬にまとめられ、来年初めの通常国会に法案として上程されるスケジュールで進んでいます。

今回、中小会社に適用される改正内容は、規制緩和の流れと政府の景気刺激への期待感から具体化し、30年前の参議院の付帯決議である、「小規模の株式会社については、その業務運営の簡素合理化を図り」、定款の自治に多くの運営を委ねるものです。しかし、同じ付帯決議で「大規模の株式会社については、その業務運営を厳正公正ならしめ、株主、従業員及び債権者の一層の保護を図り、併せて企業の社会的責任を全うすることができるよう改革を行う」としていますが、そのとおりになるのでしょうか。

アメリカのクリントン、ブッシュと続く政権から日米合意に基づく「強化されたイニシアティブ」が発揮されています。対日経済指針(2000年12月)が、より一層、会社法の改正に影響しています。「指針」は、「一世紀前に制定された商法を改正し、現代的な金融取引(株式の発行・消却・分割、ストック・オプション、年金の通算制度)の障害を取り除く。法務省の改正案では、改革が大幅に遅れ、官僚の密室審議となることが予測される。商法改正がタイミングよく、透明性をそなえた形で実施されるように求めることが、アメリカの対日交渉の目的でなければならない」と述べていることからもわかるとおり、強い圧力が商法改正にかかっています。

アメリカの圧力を受けて、日本経団連も「わが国産業の競争力強化に向けた提言」(99年5月)を発表しています。その中では、「世界的な大競争時代において、……中略…… 会社分割、分社化、株式交換・株式移転、合併等を通じたグループ化・共同化や、その再編、あるいは新たな事業形態の活用が必要であり、そのために企業法制、税制の一体的かつ迅速な整備が必要である」としています。

2日米で合意した「強化されたイニシアティブ」

日米両国政府は、1997年6月に「強化されたイニシアティブ」を確立しました。それは、規制撤廃・緩和に両国が継続して関心を集中させることの重要性を認識し、両国政府が特に注意を払うべき主要な部門・構造分野を明確にしたものです。その分野とは、電気通信、情報技術、エネルギー、医療機器・医薬品、金融サービス、競争政策、透明性、法務サービス及び司法制度改革、商法改正、流通などの分野です。

「米国政府は、『規制撤廃・緩和及び競争政策に関する日米間の強化されたイニシアティブ』が、日本市場を米国の製品・サービスに対し開放すると同時に、日本が持続可能な経済成長をとりもどすことに資する最も重要な二国間の手段であるとの強い確信を持ち続けている」(日本政府への米国政府年次要望書より)として、翌年以降、毎年、「共同現状報告」として達成に向けての進展状況が両国によって点検されています。

3透明性の具体化として要求されたパブリック・コメント手続

98年10月米国政府要望書は、「米国は、日本に対し、1998年度末までにすべての利害関係者が、各省庁及び他の政府機関が提案する規制の作成や改正の過程に効果的に参加できるような政府全般にわたるパブリック・コメント手続を採用することを求める。このような制度が正式に採用されるまでの期間は、各政府機関が重要な規制を制定する際には、それぞれの主導でパブリック・コメント手続を利用すべきである」と要求しています。

また、審議会に関しても、同要望書は、「米国は、日本政府のすべての審議会に対し、

1 中間報告や予備提言を発表する際にはパブリック・コメント手続を採用することを義務付けること、
2 審議会における審議内容の透明性を向上させること、

3
外国の非政府関係者や外国企業が委員あるいはオブザーバーとして審議会に参加することを認めることを求める」

と要求しているのです。これらの要求に対し、日本の各省庁では、ホームページ上などで審議会情報を公開するとともに具体化をしています。

4商法改正に関する要求とは何か(2000年の米国政府年次要望書より)

「現行商法下での投資や金融取引に対する大きな障害を排除し、また企業経営における説明責任とか効率性がさらに高まるよう改正が十分で包括的かつ大胆なものとなることを要望する」と前置きして、以下の各項目を提起しました。
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