リンクバナー
時潮

時潮
消費税増税
副理事長 櫻木 敦子
2019年10月に予定されている消費税率10%への引き上げまで1年を切り、安倍首相は10月15日の臨時閣議で「予定通り消費税率を引き上げる」と表明した。2014年に消費税率が5%から8%へ引き上げられた際、駆け込み需要の反動で消費が落ち込んだ。現在の消費不況の状況で消費税率を上げれば個人消費及び地域経済に大きな打撃を与えることは明らかである。

政府は、増税が景気に与える影響を考慮して様々な対策を検討している。複数税率導入のほか、中小小売店での商品購入時にキャッシュレス決済を行う消費者に対しポイント還元すること、自動車取得時の税負担の軽減、住宅ローン控除の拡充及び延長などである。ポイント還元の方法については、マイナンバーカードを使うことが検討されている。キャッシュレス決済やマイナンバーカードの普及を推し進めたい政府の方針に便乗する政策のように感じる。

先日、会計検査院の調べで、個人事業者が先代から事業を引き継いだ場合の「事業者免税点」制度により徴収されなかった消費税額は、2016年までの3年間で約2億2千万円にのぼると報道された。検査院は、事業が継続している場合に納税義務を免除することは制度の趣旨に合わないと判断し、検討の必要があるとしている。しかし、事業承継により経営者が変わることは、小規模事業者にとっては新規開業と同じ不安定な状態である。政府がそこを締め付けようとしているのは、「軽減」税率導入による税収減の穴埋めのためではないかと勘ぐってしまう。

日本商工会議所が9月にまとめた中小企業への調査によると、軽減税率対応について「準備に取りかかっていない」という回答が8割を超えた。事業者にとって、軽減税率、インボイス、さらにはポイント還元制度が導入された場合のシステム対応には相当の費用がかかり、また事務的負担も増加する。特に対応が遅れている中小企業にとっては深刻である。

先日、当事務所で顧問先を招いて消費税改正講座を開催した。これまでの増税と違い、複数税率とインボイス制度が導入されるにもかかわらず情報が浸透していないためだ。マスコミは消費税増税と複数税率について細かく報じはじめたが、インボイス制度についてはほとんど報道していない。講座では、複数税率については興味深く聞いていた方も、区分記載請求書等保存方式や適格請求書等保存方式などのインボイスの話になると頭をかかえていた。「うちは免税だから」、「簡易課税だから」・・・などと興味のなかった顧問先の経理担当者も、講座終了後には「すべきことがありすぎる、持ち帰って検討しなくては」とあわてていた。

免税事業者であるひとり親方の場合は深刻である。免税事業者のままで消費税分を上乗せして請求出来れば良いが、拒否された場合には、登録事業者になり消費税の負担をするのか、消費税相当額の値引きを受け入れるのかの選択を迫られる。廃業を検討している小規模飲食店の事業者もいると聞く。

消費税増税についてはこれまで2回延期した経緯がある。菅官房長官は「リーマン・ショックのようなことがない限り引き上げる」と増税に条件を示した。消費税増税、複数税率およびインボイス制度の導入が行われればどのような影響があるのか、私たちは国民に知ってもらう努力する必要がある。そして、中小企業や国民生活に打撃を与える消費税増税は阻止しなければならない。

(さくらぎ・あつこ:東京会)

▲上に戻る