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時潮

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消費税、七つの問題点を考える
副理事長 佐飛 淳一
安倍首相は、10月15日の臨時閣議で、消費税率を来年10月に8%から10%に引上げる予定を表明した。所得税と比較しながら、改めて消費税のもつ問題点を考えてみたい。

 生活・暮らしにとっては
消費税は、原則として、暮らしのあらゆる支出に対して税負担がついてくる。生活費課税であり、消費税分生活費が上がるか、切り詰めることになる。所得の低い家計ほど負担割合が高くなる逆進性の税金である。貯蓄を取り崩しての支出にも税負担となる。
所得税は、原則として生活費非課税。勤労所得には軽課税である。

 福祉にとっては
消費税は、失業者・生活保護受給者など所得が無くても、生活費に税負担となる。地震・水害・台風などの被災地の住民も税負担となる。
所得税は、失業給付や生活保護給付などは非課税である。所得が無ければ課税は無い。

 中小事業者にとっては
経済的力の弱い中小事業者にとっては、消費税の転嫁は難しい。転嫁できないと身銭を切ることになる。利益を削っての消費税負担増となる。当然、消費税の滞納の増大となる。又、複数税率となれば事務負担となる。
適格請求書(日本版インボイス)制度で、免税事業者である零細事業者は、取引から排除されるか、あえて課税事業者となるかの選択を迫られる。存亡の危機となる。
所得税は、利益に対する課税であり、赤字ならば税負担は無い。

 雇用にとっては
企業は、リストラをして派遣労働者にかえれば、納める消費税は少なくなる。人件費の外注化、委託化が促進される。
所得税は、給与でも外注費でも経費として同じ扱いである。

 大企業・大資産家にとっては
大企業は、消費税の転嫁を行うことで、利益から負担することはない。実質的には、消費税を一円も負担しない。むしろ、下請に対して転嫁を許さないことで利益を増やすことが出来る。又、輸出企業は、ゼロ税率により国内で支払った消費税の還付を受ける。輸出補助金となる。
配当収入や株・土地取引は非課税となり、大資産家の投資活動には消費税負担はない。
消費税は、大企業・大資産家にとっては儲け促進税と言える。
所得税は利益に対して課税。応能負担原則にもとづく総合累進税制とすることで、憲法原理に適う税制が実現される。

 経済格差については
消費税は、生活費への負担となり、逆進性ゆえに貧困と格差を拡大するものとなる。
所得税は、経済的能力に応じた制度とすることで貧困と格差の是正に資するものとなる。

 経済活動にとっては
消費税は、GDP(国内総生産)の60%を占める庶民の暮らしを直撃し、景気は悪化する。不況税である。
所得税は、所得・富の再分配で景気を調整する役割をはたす。
七つの問題点をみても、消費税に基幹税たる資格はない。消費税の増税は中止すべきである。直接税中心の応能負担原則にもとづく総合累進の税制こそ、今日求められる税制である。

(さび・じゅんいち:大阪会)

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