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時潮
栃木県税理士政治連盟の会員地位不存在確認等請求事件
〜税政連自動加入の会員の皆さんへ会費未納者は会員ではありません〜
関信会 秋元 照夫
私は2018(平30)年5月17日に被告栃木県税理士政治連盟(以下栃税政という)に対し以下の請求を求める訴訟を宇都宮地裁に起こしました。2018(平30)年7月18日に第1回の口頭弁論が開かれましたのでその概要をご報告いたします。

(1) 請求の趣旨は、以下の3点です。
  1. 原告と被告との間において、原告が被告の会員でないことを確認する。
  2. 原告と被告との間において、原告が被告に対して昭和58年度から平成30年度までの各年度につき、会費1万円の支払債務が存在しないことを確認する。
  3. 被告は、原告に対し、100万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払えとの判決並びに第3項について仮執行宣言を求める。
(2) 被告の答弁書の要点
第1本案前の申立

  1. 原告の請求の趣旨第1、2 項を却下する。
  2. 本案前申立の理由
    請求の趣旨第1項については確認対象の適格性を欠くうえ、請求の趣旨第1、2 項について原被告間に争いが無く、即時確定の利益も欠いている。
第2 本案の答弁
  1. 原告の請求の趣旨第3 項を棄却する。
  2. 訴訟費用は原告の負担とする。
第3 請求原因に対する認否
  1. 入会の意思を確認されることなく被告会員であることを余儀なくされていることは否認ないし争う。
  2. 本件規約第6 条第1項(関東信越税理士会に入会している税理士会員で、本県内に所属するものはその資格において会員となる。)が公序良俗に反し無効であることは争う。その余は認める。(会員でないことは認める。)
  3. 会費支払義務がないことは認める。
  4. 原告の意思如何にかかわらず被告の会員として扱われたことは否認する。
  5. 原告の被った精神的苦痛に対する慰謝料100万円と弁護士費用10万円の損害賠償請求は争う。
一部抜粋
被告においては、最高裁判所平成8年3月19日判決民集50巻3号615頁判決(いわゆる牛島税理士訴訟判決)以来、会員のうち被告会費を支払わない者や被告に所属しない意思を明瞭にした者について、会員として扱わない運用をしてきた。

すなわち、被告は、これらのものに対しては、会費徴求を強いることなく、税理士会員として不利益取扱をすることをしない運用をしてきている。

すなわち、税政連会員地位についてオプトアウトの取扱をしてきたものである。当初は、税理士登録と同時に税政連会員とされても、会費不払い等被告に所属しない意思を示した者については、会員として扱わない運用をしてきたものである。

すなわち、乙1の平成29年度決算書を見れば明らかなとおり、収支計算上払った者の数だけを会員として把握している。この扱いは乙2の平成30 年度予算についても前年直近期の会員数で予算を組んでいるのである。

被告の主張
1.オプトイン, オプトアウト

加入者の意思を反映させるには、加入時に加入意思を確認する方式のオプトイン方式と加入後加入存続状態の意思を確認する方式のオプトアウト方式とがある。
弁護士会の政治連盟の加入については、オプトイン方式が採用され、税理士会の政治連盟の加入については、オプトアウト方式が採用されている。オプトイン方式の場合、加入者の意思が加入時に明らかになって帰趨が決まるという特徴があり、オプトアウト方式の場合、加入者が一旦は加入することとなるが意思が明らかとなり次第帰趨が決まるという特徴がある。したがって、いずれの方式が合法で、いずれの方式が違法というような関係ではないものと解される。

2.会員でないことの確認請求(請求の趣旨第1項)は適法でないこと。
この請求は、請求の趣旨第2 項の会費支払い債務不存在確認請求によって目的を達することができるので、確認の対象としての適格性を欠く。
加えて、被告は原告が会員でないことを争っておらず、即時確定の利益も欠いている。したがって、この請求は却下されるべきである。なお、原告代理人からの質問に被告が回答しなかったのは、単に原告を被告会員として扱っていない以上回答の義務はないと考えたからにほかならない。

3.会費支払い債務不存在確認請求(請求の趣旨第2 項)は適法でないこと。
この請求は、被告が会費不払い者に対して、支払い債務を請求した事実が無く債務の存否について争いが無い以上、即時確定の利益を欠いている。
したがって、この請求も却下されるべきである。

4.不法行為請求の失当性
原告の不法行為請求の根拠は、原告を被告が会員として扱ったことにより思想信条の自由、政治活動の自由が害されたということである。
しかし、被告は原告を被告会員として扱った事実は無く、不法行為の前提を欠くのであって、この請求は理由がなく、失当であり、棄却を免れないものである。

5.結論
上記のとおりであるから、請求の趣旨第1,2項は却下されるべきであり、請求の趣旨第3項は理由がなく棄却されるべきである。
次回法廷は9月5日午前10時15分です。被告の主張に対し原告の反論を行う予定です。
続く

(あきもと・てるお)

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