「森友学園」との土地取引をめぐる決裁文書を財務省が改ざんした問題で、当時の理財局長だった佐川宣寿・前国税庁長官が国会で証人喚問される。財務省は当初「森友学園」への国有地売却問題の文書の保存について、国会において「廃棄した」と説明していた。しかし、新たな文書提出でその答弁が偽証であったことが明らかになってきた。この問題はさらに国会で厳しく追及されることになるであろうが、今回の事件の進展は、財務省が醸成してきた、あるいは日本の官僚機構に内在していた問題を白日の下に晒すことになった。
1. 財務省の責任
財務省のHP を開くと「財務省の使命」として次のような記載がある。
納税者としての国民の視点に立ち、効率的かつ透明性の高い行政を行い、国の財務を総合的に管理運営することにより、健全で活力ある経済及び安心で豊かな社会を実現するとともに、世界経済の安定的発展に貢献すること。 |
ここに書かれている文言について逐一批判していたら枚挙に暇がないが、このような「使命」を真顔で堂々と標榜しているとすれば、財務省は信用に値しない異様な組織ということになる。事実、今回の問題について、市民団体が佐川国税庁長官を証拠隠滅容疑で、学園側と土地売却交渉をした当時の財務省近畿財務局職員を背任容疑で、それぞれ東京地検に告発し、受理されている。現行の法制度では背任罪は個人に課せられる罪であるため職員を対象としているが、この背任の嫌疑はこの一職員ではなく財務省そのものに向けられたものと言ってもいい。
財務省は、国民の財産権に対して課税徴収を通して絶対的な権限を持っている。また、国家権力の中枢に位置する財務省は、その権力を行使するがゆえに他の省庁よりより高い倫理観が求められていたはずである。そのような国民の期待を裏切り、事実を隠ぺいする行為は長年培われてきた民主主義的な仕組みに対する信頼を根底から覆してしまった。
もはや、課税の公平性や透明性の確保について財務省がいくら声高に叫ぼうともだれも信用しない。このような組織にこれからも国家の財産管理や課税実務を任せておいていいのかという不信感が蔓延している。
財務省の解体的な組織再編以外に、すでに道はない。
マイナンバー制度が機能してくれば財務省には国民・納税者の膨大な個人情報が集積されるようになる。そしてその個人情報は厳格に管理されることが原則になっている。しかし、この個人情報の個人番号利用事務実施者(主に行政機関)が自分に有利な情報のみを利用したり、あるいは行政に不利な情報を隠蔽するようであれば、国民にとってこんな危険な状況はない。
2. 権力の腐敗
今回の問題は、財務省の解体だけにとどまらず近代国家の国家運営とはいかなるものなのかも考えさせられた。財務省や文科省で明らかになった政治介入に「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対に腐敗する」ことを私たちも肝に銘じなければならない。効率化の名のもとに新自由主義的な発想で国家運営が行われ、議論を排する議会運営の横行や法案の一括上程など放って置けば民主主義はどんどん霞んでしまっている。誰かにお任せの民主主義は一見楽そうではあるが、そのしっぺ返しは数十倍になって私たちに帰ってくる。民主主義とは手のかかるものである。
だから私たちは、声を上げ続けなければならない。 |