リンクバナー
時潮

税理士会に意見を述べよう
- 税理士会(公益法人)と税理士政治連盟(政治団体)は異なる組織 -
東京会 佐伯 正隆
1 はじめに

先々月号(6月号 No.655)の湖東京至先生の「牛島税理士訴訟の勝利から学ぶ」を拝読、改めて牛島税理士訴訟の意義を再確認することができました。

1996年3月19日の最高裁判決にもとづき南九州税理士会は税政連に与えていた便宜を全て廃止し、各地の税理士会も税理士会と税政連は別組織であるとし、一体的な運営を止める努力していたと思います。

しかし、時が経過し牛島税理士訴訟判決を知らない税理士が増えてきたこともあり、各地で税理士会による税政連への利益供与や「強制」加入問題がおきるようになっているようです。

2 東北税政連の強制加入問題、栃木県税政連の会費徴収問題など

2015年7月頃だったと思いますが、東北税経新人会の役員さんから税政連問題での資料を受け取りました。

税政連に脱会届を提出したところ、税政連から「税理士会会員は全員税政連の会員であり退会届は無効である」という、とても信じられないような内容でした。

また、その頃栃木県税理士政治連盟(栃税政)による税政連会費と税理士会会費の一体徴収問題に関して、関信会の秋元照夫先生から東京税理士政治連盟の規約を送ってほしいとの連絡がありました。

栃税政では、「税理士会会員は全て栃税政の会員である。」という規約のようで、全国各地の税政連の規約を調べているとのことでした。なお、東税政の規約では「東京税理士会会員のうち会員となった者」だったと記憶しています。

栃税政における会費の一体徴収問題のその後は、先々月号 No.655「関東信越税理士政治連盟会費徴収問題を問う」に掲載されています。

3 税理士会支部と税政連の一体化

(1)昨年10月18日に支部から次のようなメールが送られてきました。「11月11日(金)に開催されます件名のご案内のご案内を添付してお送りします。よろしくお願いします。」として、「〇〇衆議院議員の時局演説会」の案内が添付されていました。

巷では解散総選挙も噂された頃で、添付されたチラシは大森税理士政治連盟会長名による自民党現職国会議員の時局演説会の案内でした。

すぐ、「税理士会が政治団体である政治連盟の案内を行なうとはどういうことか。公益法人であり強制加入団体である税理士会が政治活動をしている団体に便宜を図ることは、会員の思想信条を踏みにじるものである。何故このような事が行なわれたのか、明らかにされたい」とメールを送りました。

2日後だったか、税政連の幹事長が突然当事務所に、大変申し訳なかったと謝罪にみえました。

私は、「中小企業のために、国民のために税理士が政治活動に取り組むことは良いことだと思います。また、特定の政治家を支援することも構いませんが、自分たちでお金を出し合い、ビラを作成し、封筒に宛名を書いて郵送したらどうですか。自分たちで努力しましょうよ。税理士会を利用したらダメでしょう。」と申し入れたところ、「実は政治活動は余りやりたくはないのです。以前からやっていることなので、立場上やっています。今後は税理士会のメールで案内をすることは致しません」とのお話でした。近くに事務所のある、知り合いの税理士さんなので、そこで話は終わりとしました。

(2)つい先日、当事務所の職員の税理士登録が完了、支部から会費の請求書がきました。その職員から「会費の請求内容がおかしいと思う。税政連の会費が並列して記載され、一括で支払うようにみえる」と請求書を持ってきました。他の税理士からも「支部に意見を言うべきだ」と言われ、質問状を作成し支部長宛てに送りました。

質問は概略「税理士会は強制加入団体であることから、その構成員である会員には様々な思想・信条及び主張を持っている者がいます。一方、税政連は政治団体であり、政治資金規制法第3条に規定されているように、その性格は『政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体』、『特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体』などと定められています。・・・別紙のような請求書が送られてきた理由を説明いただきたい。その他にも支部において、税政連の書類等を同封するなど、便宜をあたえていると見受けられることがあります。これらについても、検討のうえ改善されたい」でした。

その3日〜4日後だったと思いますが、私が留守中に支部長が当事務所に訪れ、文書を置いていきました。

その内容は「大変申し訳ございません。支部会費と税政連会費とは、その趣旨・性格は全く異なるものですので、今後は支部からの請求案内には税政連会費は含めず、支部会費だけの請求とさせていただきたいと思います。ご指導ありがとうございます」との内容でした。

支部による税政連への便宜供与などが改善されるか疑問はありますが、多くの税理士が、支部などに対し一言意見を述べる必要があると思います。

 (さえき・まさたか)

▲上に戻る