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時潮

時潮
庶民増税と税務行政の強権化をねらう
2017年度税制改正大綱

副理事長 佐飛 淳一
はじめに

安倍内閣は、12月22日に2017年度の税制改正大綱(以下「大綱」)を閣議決定しました。「大綱」は安倍内閣の4年間について「雇用・所得環境は大きく改善」と自画自賛。しかし、「世界で一番企業が活躍しやすい国」をめざした「アベノミクス」が行き詰まり、貧困と格差の拡大をもたらしたことは明らかです。
「大綱」は「一億総活躍社会」の実現へむけての取り組みとして、個人所得課税改革を上げています。又、「企業収益の拡大が雇用の増加や賃金の上昇につながる」として、大企業優遇税制を温存しています。

個人所得課税改革については、「今後数年かけて、基礎控除をはじめとする人的控除の見直し等の諸課題に取り組む」として、所得税増税の方向を示しています。
さらに、納税環境の整備として、国税犯則取締法(以下「国犯法」)を国税通則法へ編入するとしています。このことで税務行政の強権化が懸念されます。

配偶者控除の見直し

個人所得課税改革の第一弾として配偶者控除・配偶者特別控除の見直しを上げています。
配偶者控除の適用要件が年収103万円である為、働く時間を調整する「就業調整」が行われます。いわゆる「103万円の壁」です。
配偶者特別控除の収入要件を引き上げることで、配偶者の年収150万円までは38万円の控除が可能となります。

同時に、納税者本人の収入が1220万円を超えると配偶者控除・配偶者特別控除の適用はできないこととなります。基本的「人的控除」である配偶者控除に納税者の所得制限を設けたのです。
「就業調整」は、税制上の問題だけでなく社会保険(年金・健康保険)への加入が問題となる「130万円の壁」、企業の配偶者手当制度の問題などがあります。



税務行政の強権化

「大綱」は「国犯法」の犯則調査手続きの見直しと国税通則法への編入を行うとしています。
犯則調査手続きの見直しでは 刑事訴訟法の改定を受けての、パソコンのデータなどの電磁的記録の証拠収集手続きの整備、 関税法の手続きの取り込みによる、郵便物等の差押え、臨検等の夜間執行、臨検や差押えの立会人に都道府県職員を動員するなどを整備するとしています。
19年4月施行で、「国犯法」を国税通則法に編入する予定です。しかし、この編入には大きな問題があります。

「国犯法」は犯則事件(脱税)を取り締る強制調査の法律です。国税通則法は行政処分の為の手続き、任意調査の手続きに係る法律です。法の趣旨の異なるものを一体にすることは問題であると考えます。
実際の税務調査において、強制調査と任意調査との区別が曖昧になる可能性があります。任意調査であるにもかかわらず、強制調査の手法による納税者の権利を侵害する調査が行われる可能性があると考えます。
編入による法整備の過程で、現行の国税通則法の事前通知などの調査手続きが改悪されないか、監視していく必要があります。

平和的生存権の為の税制へ

「大綱」は、庶民増税と税務行政の強権化をねらっています。企業収益の拡大が雇用の増加や賃金の上昇になるーいわゆる「トリクルダウン論」ーとして、大企業や大資産家優遇税制は温存しています。
憲法30条は、「国民は、法律の定めるところにより納税の義務を負う」として、租税法律主義による「納税の義務」を定めています。この納税の義務は、一方的な納税の義務ではありません。憲法のめざす平和的生存権の保障された社会づくりのための納税の義務です。

貧困や格差の拡大する中で、必要とされる税制は“ 経済的能力に応じた応能負担に基づく税制” です。
生活費非課税、勤労所得軽課税、所得に応じた累進課税。生活に課税し、低所得者ほど、負担割合の大きくなる逆進性の消費税は廃止すべきであり、大企業や大資産家を優遇する税制も廃止すべきです。
税金は平和的生存権の充実のため、つまり憲法9条、25条(生存権)、26条(教育権)、27条(勤労権)の実現のために使われるべきではないでしょうか。また、その様な税制にしていく必要があると考えています。

(さび・じゅんいち:大阪会)

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