明けましておめでとうございます。
第二次安倍政権の傲慢で独善的な運営が、自民・公明に維新を巻き込んだ数の暴力で「強行採決」を連発し、議会制民主主義を壊すモラルハザードを引き起こしている。
「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)」承認・関連法案審議の最中に所管大臣の山本有二農水大臣が二度にわたり「強行採決」の暴言。安倍首相は、「我が党に於いては結党以来、強行採決を考えたことがない」(10 月17 日TPP特別委員会)と答弁し辞任要求を拒否した。
一昨年の、安保法制。参議院の委員会では、国会を取り巻く市民の慎重議論・戦争法反対の声を無視して突如として審議の打ち切りを行い、怒号の中で委員長の声も聞き取れず採択も定かでない状況で行った行為は「強行採決」ではなかったのか?
安倍首相の答弁の舌の根も乾かない11月5日、TPP承認・関連法案は採決日程の与野党協議を無視して安倍首相の強い意向で審議打ち切り「強行採決」された。
年金のカットを伴う「年金改革法案(年金カット法)」でも、11 月23 日萩生田光一官房副長官は「強行採決なんて世の中にあり得ない。採決を強行的に邪魔する人たちがいる」と暴論を述べたが、安倍首相も11 月25 日の委員会質疑で「私の述べたことを全くご理解いただけないようであれば、こんな議論を何時間やっても同じ」と言い放ち、直後に「強行採決」を行った。これは、まさに「私は立法府の長」と国会の審議を軽視する傲慢な独裁者の態度に他ならない。
自民・維新の議員立法で提案された「統合型リゾート(IR)の整備推進法案(カジノ法案)」は刑法の186 条の特例を求め、昭和25 年11 月22 日最高裁大法廷で示された賭博行為は公序良俗に反するという判決に真っ向対決する提案である。それ故に、与党内部でも異論があり、時間をかけて議論が保障されなければならなかった。
衆議院での委員会審議は6時間弱。発議した国会議員の答弁も、自民党議員の質問も「質問時間が余っているから」と般若心経を唱える有様。自民・公明・維新の多数派議員は、安倍首相に倣い、数の横暴、国会の自殺行為、モラルハザードを引き起こしていると言わざるを得ない状況である。この国は民主国家と言えるのであろうか?
中央大学法科大学院の佐藤信行教授は「民主主義だから多数決で決めればいいというだけなら、極端な話、選挙で多数派が決まった時点で審議をやる必要もないし、国会も不要かもしれません。しかし、法案審議で丁寧な議論を尽くすことが重要なのです。野党があらゆるケースを想定して質問をし、与党がこれに対して明確に回答していくことで、法案における利害関係の調整が適切かどうか、見落としていた論点はないか、制度の問題点はないかを明らかにできます。こうした議論を重ねることによって、法律が国会の手を離れて実際に執行される時に、どのような運用がされるのかについての規準をあらかじめ形作るという機能を有するのです」と指摘する。(「強行採決は何が問題なのか〜特定秘密法の成立に寄せて」Chuo Online)
TPP法では69.4%の慎重審議を求める世論(11.28 共同通信世論調査)年金カット法でも賛成33.8%に対して反対58%(同)カジノ法案でも反対57%(12.4 読売新聞)と野党の背後には過半数をこえる国民の反対の声があった。この声を無視して、野党の質問には誠実に答弁せずかみ合わない議論の上に「こんな議論を何時間やっても同じ」と採決を強行することは議会軽視、暴走としか言えない。
1933 年3月24 日ヒトラーは「全権委任法」を成立させ独裁体制を完成させた。その背景は、共産党議員をはじめヒトラーに反する国会議員を逮捕し議会の形骸化を完成させたことにある。数の横暴は議会の形骸化を招く。多数派の専制は、もはや独裁である。このことを忘れてはならない。 |