国税庁が平成27 年度の調査統計を発表しました。
法人税の場合、調査法人数が94 千件、申告法人数に占める割合(調査割合)は3.33%でした。
平成20 年度に146 千件だった調査法人数は、新国税通則法が施行された平成24年度に93 千件に激減し、その後も91 千件→ 95 千件→ 94 千件と横ばいで推移しています。
調査割合も平成20 年度の5.20%から平成24 年度に3.37%に激減し、その後は3.28%→ 3.40%→ 3.33%と横ばいです。
5月に行われた「全国国税局課税(第一・第二)部長会議」では「法人課税課当面の課題」として、実地調査割合は「低下傾向」にあり、「今後、大幅な改善が見込まれない」とした上で、その対策として、「事務の効率化により・・効果的に事務量を投下」「一般同時調査と重点項目調査に配分」「実地調査以外の手法の本格実施」「調査選定の高度化」をあげています。
このうち特に注意すべきは「実地調査以外の手法の本格実施」ですが、そもそも「実地調査以外の手法」とは何でしょうか?
実地調査とは、「納税義務者の支配・管理する場所」で行う調査です(関係通達3-4)。そして、実地調査の場合のみ事前通知が必要です(国税通則法74 条の9)。したがって税務署に呼び出して行う調査は、「実地調査以外の調査」となり、事前通知の手続きは必要ありません。
「平成27 事務年度における課税部(部門)の事務運営に当たり特に留意すべき事項について(指示)」には、「実地調査以外の手法」の具体例として実地調査以外の調査、行政指導、電話、書面照会、書面添付制度の意見聴取があげられています。
要するに「実地調査以外の手法」で事前通知の手間を省いて実績をあげていこうということです。
また、文書上は見つけられませんでしたが「質問応答記録書」が多用されていると感じています。これは応答に対し、納税者が署名、押印するものなので証拠能力があります。
現場の調査官はどうでしょうか?
清文社から「課税庁職員と税理士のための税務調査における事実認定」(税理士高松謙悟著)という本が出版されています。
「まえがき」には、本書は「調査経験の浅い国税調査官」等に「「調査の基礎知識」を体系的に文章化した」「基本書」と書かれ、続けて「国税の職場においては」「「調査の基礎知識」は、上司先輩から個別に伝承されるものだという意識が長年支配的」で「遵法意識の低い上司先輩から指導を受けた調査官等は、無理な「事実認定」や、正しい証拠に基づかない「事実認定」をする調査官に育つおそれがあり」「ごく一部ではありますが」このような調査官が「散見されます」と述べています。
新国税通則法の施行から約4年。税務調査も変化しています。かえりみるに税理士はどうでしょうか?
よほど大きな事務所で集団的に対応している場合でなければ、調査の経験は限られたものです。税理士試験で出題される訳でもなく、「調査の基礎知識」を学ぶ機会もなかなかありません。
税経新人会は「憲法にもとづく国民の権利を擁護する立場」(会則)から研究し、実践を行っています。
憲法から出発して質問検査権の考え方を理解し、通達やFAQまで検討し、実際の調査事例については例会・事例検討会等で交流しています。
例会・事例検討会等を中心に全国でおおいに学び、活発に経験交流し、「調査に強い税経新人会」の魅力を発揮しましょう。 |