7月11日参議院選挙の翌日、沖縄県の東村高江周辺の米軍のヘリコプター発着場(ヘリパッド)の増設工事に、突如として政府は着手した。それは、参議院選挙での沖縄担当大臣の落選の腹いせ、沖縄県民へのイジメとしか映らない。
豊かな森、静寂の村で普通に暮らしたいと願う住民は、ヘリパッドが集落を取り囲む位置で建設され、墜落の危険性の高いオスプレイが配備され、昼夜を問わず飛び回れば住むことができないと、2007年7月から非暴力の抗議を続け、工事が中断されていた。住民たちの抗議に襲い掛かったのは機動隊の暴力である。ここには、民主主義の欠片もない。
集められたのは東京都、千葉県、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県の機動隊。形式的には、沖縄県公安委員会から6都府県公安委員会に対して警察法第60条第1項の規定により警察職員の派遣を要請。任務は「米軍基地移設工事等に伴い生ずる各種警備事象への対応」とされている。各県公安委員会が管理する警察組織に管轄区域を跨いで派遣要請することは、行政の裁量権の範囲として無原則に拡大することは許されるのであろうか?
戦前は、我が国の警察権はすべて国家に属し国家警察組織により集中的に運営されてきた。戦後、昭和22年に改正された警察法は、憲法の主権在民や地方自治の規定を受けて警察権の地方分権化と分散的な行政機関の分掌制度を導入した。昭和29年の改悪により地方分権主義の後退と国家の介入が強化された。
警察法第2条では「1警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他の公共の安全と秩序の維持に当たることをもってその責務とする。2警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであって、その責務の遂行に当たっては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない」としている。警察官職務執行法では「この法律に規定する手段は、前項の目的のため必要な最小の限度において用いるべきものであって、いやしくもその濫用にわたるようなことがあってはならない」(第1条第2項)とし、以下、質問等について「合理的に判断」「相当な理由」と限界を示している。
高江での機動隊の行為は、警察車両でのひき逃げ(21日)、道路交通上支障のないテントの強制撤去、座り込みの住民への殴るけるの強制排除に及び、けが人も多数出ており、首絞め事件も起きている。これは「必要な最小の限度」を逸脱した暴力である。県道の封鎖・検問も「相当な理由」を示さず警察権の濫用である。
日本弁護士連合会は昭和28年10月31日で「警察法改正に反対する件(決議)」で「これは日本国憲法地方自治法及び警察法に一貫せる主権在民の民主主義とこれに基く地方分権の基本原理に背反するのみならずこれが立法化は、官僚主義の復活と人権無視の思想を助長し、人権蹂躙事件を頻発せしむること必至である」と警告した。まさに、辺野古や高江の現状は、警察が「不偏不党且つ公平中正」の立場を放棄し、政府の走狗と化した弾圧である。
翻って、我々の主戦場である税務行政は如何であろう。国税通則法で規定されている調査手続きに対して、その瑕疵を指摘すれば「調査手続瑕疵を理由とした非協力事案」とし「特定の税理士が複数の非協力事案に関与しているケースもある。組織を上げて対応していく必要がある」と敵視する。「大口欠損法人や事業内容が簡易、または調査必要度が低いと認められる法人に対しては行政指導(書面照会)を活用して、年間調査件数の2割を目途に接触する」とし、行政指導に名を借りた課税標準の調査や税務署への来署要請など調査手続きを形骸化する施策を推進している。これらは、行政権の逸脱、濫用である。
納税者の権利を擁護し、行政権の濫用を監視するのは税理士の重要な責務である。 |