先の参議院選挙が行われ、結果が確定した翌日7月11日、新聞は、「参院選与党
大勝 改憲派2/3超す」(読売・夕刊)「4党に非改選無所属含め改憲勢力3分の2」
(朝日夕刊)と報じました。選挙運動期間中は、自民党・公明党は改憲問題には触れ
ず、安倍首相は、経済と外交の「成果」の宣伝に終始していました。直前の消費税
率引き上げ延期も功を奏し、数字の上では、読売新聞の言うように「与党大勝」と
なりました。「改憲」はどのようになるのでしょうか。
11日の首相の記者会見では、質疑応答のなかで、「自民党は憲法改正を掲げてきた。
かつ改正草案が出来上がり、それを実現していくのは総裁としての責務だ。与えら
れた任期を全力で務めていく。」(12日東京新聞会見要旨)としています。
安倍首相は、2013年7月21日の参議院選挙では、「アベノミクス推進」を主張し、
自民大勝後、同年12月6日、国民の大反対を押し切り特定秘密保護法を成立させ
ました。2014年12月14日の衆院選挙でも、「アベノミクス継続」を主張して大勝し、
翌2015年9月19日、憲法学者なども違憲とする安全保障関連法を成立させてい
ます。今回の参議院選挙は、「アベノミクスは道半ば、もう一度ふかす」といって経
済優先を唱えてきました。多くの国民が反対している過去2つの法案について強行
採決してきた姿勢をみると、当然強引に進めてくると考えるのが当然です。与党関
係者は、この秋から国会内で議論を進めるといっています。
自民党の「日本国憲法改正草案」について皆さん読んだことがありますか。自民
党ホームページに、条文対照表形式で30ページのPDFがあります。詳しい内容
にはふれませんが、昨年成立した安全保障関連法をさらに進めて「国防軍」という
名称で、より規制のない海外にも派遣できる軍隊とすることや、人権や民主主義を
強力に制限できる内容を規定していると思います。
他の政党も「改憲」「加憲」を主張しており、自民党の草案でまとまるものではないと言っている方もいます。しかし、国会内で最大議席をもつ政党が、危険な「改憲」草案を主張しているこの時期に、あえて現行憲法のなかでも矛盾しない権利の規定
創設(環境権・プライバシー権)などを唱えて、これがわが党の「改憲」「加憲」だ
といっても「改憲」容認のカムフラージュだと言わざるをえません。
2015年6月衆議院憲法審査会で、自民党推薦を含む参考人3人が安全保障関連
法案を違憲としたにもかかわらず、公明党はこの法案に賛成していますが、本当に
法案の内容を真剣に吟味したのでしょうか。「与党」を重視したのでしょうか。やは
り真の改憲の焦点は、「あたらしい権利」の規定ではなく、自民党草案の中の、9条
(9条の2、9条の3創設含む)「改正」と「緊急事態条項」の創設を含む人権規定の
制限に収斂(しゅうれん)されるのです。
安倍内閣では、以下のような人権制限法案成立の実績があります。
- 2013年5月24日番号関連4法が成立
- 2013年12月6日特定秘密保護法が成立
(対象となる秘密を「特定秘密」とし、「防衛」「外交」などのため必要として内閣が認めさえすれば秘密にでき、内閣の承認さえあれば永遠に特定秘密とし維持可能)
- 2015年9月3日番号法「改正法」が成立
- 2015年9月19日安全保障関連法が成立
(場所の制約なしに、自衛隊員が「戦闘地域」での兵站、治安活動、米軍防護の武器使用をする、そして集団的自衛権行使が可能に)
- 2016年5月24日改正通信傍受法
(いわゆる盗聴法で、メール・SNS含む電話盗聴が、通信事業所での通信事業者の立ち合いによる盗聴から、立ち会い不要で警察署内での盗聴が可能になる)
- 同日、改正刑事訴訟法成立
(一部可視化、すなわち警察・検察の裁量による録音・録画と、自らの罪を免れるために虚偽の供述を助長し無実の他人を巻き込む恐れのある司法取引の導入)
- 今後、共謀罪(犯罪に至らなくても謀議をすれば犯罪とできる)の成立目論む
憲法は、個人の在り方・生活に直結しているものです。現憲法が、国家権力を制限するものから、仮に個々人の権利を制限するものに変わると、個々人の運命は国の決定から逃れられることができないものとなる可能性があります。納税者の権利もしかりです。新人会では、中から外にも向けて、大いに議論していけたらと思います。 |