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静岡会 良心の砦として
静岡税経新人会 事務局長 栗原 幸夫
明けましておめでとうございます。
地球環境の変化を報じるニュースが目立つこの頃、二酸化炭素の排出が原因と目される温暖化により北極においても氷が溶け続け、早ければ2020 年までに氷がなくなるという推定もあると言う。北極の氷が溶けることにより北極海航路の有用性が高まったことは、パナマ運河やスエズ運河の航路の重要性に変化をもたらし、"北極を誰が支配するか! " 新たな国際問題を生みつつあるようだ。しかし、課題が大きすぎて個人として何かをしようという気持ちにはならないが、身近な人為的な出来事については何かできることをしなければという気分にさせる。

自分の手の届きやすそうなマイナンバー制度についての対応は、個人としても、税理士として関心もたざるをえない。

なぜ不快感や抵抗感が生まれるのか?たぶん "マイナンバーの導入の意義と、取扱者の責任やリスクの重さがバランスしていない" こと、国の責任のとり方に今ひとつ信頼がないからなのかもしれない。取扱者として、法律に努力義務があるとしても、個人として不測の危険を回避する気持ちに成るのは当然と考える。過去の例から国が個別の損害に対して補償するとは考えられないし、現に審議している間に、日本年金機構で加入者の氏名や基礎年金番号など、125 万件の個人情報を外部に流出させるとの報道があったにもかかわらず、さしたる混乱もなくマイナンバー法案は成立したようだが、その後の導入に向けての関連企業の儲けぶりや、マイナンバーについての比較的好意的な報道、安全保障関連法案の成立を巡る国会運営と併せて考えるとき、権力による監視機能の強化という側面を強く感じざるを得ない。

税理士会の導入に関するスタンスは、まず導入ありきで、税務署の対応よりはしゃぎすぎでないのかと感じるのは私だけだろうか?こういう雰囲気が続けば、当初政府の言っていた税・社会保障・災害以外には使わない、使わせないとしていたことも、便利さの中でパスポート、病歴、口座管理など次々とその使用範囲を拡大させ、挙げ句の果て、カードがなければ生活がおぼつかない世の中になっているかもしれない。そこには民主主義も基本的人権も何もなく、権力にとって都合良い "Your Number" の部分だけが残るのではないかと大変心配するところである。

孤軍奮闘する税理士にとって、情報や連帯をもたらす新人会の存在は、大きな支えとなると感じています。静岡会は高齢化で、廃業やお亡くなりになる方々が続き、組織と言うにはあまりにも小さいところですが、良心の砦としてやっていきたいと思います。

2016 年新春
(くりはら・ゆきお)

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