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東京会 2016 年新春におもう
東京税経新人会 会長 井上 礎幸
あけましておめでとうございます。東京税経新人会の会長をつとめております、井上礎幸と申します。
全国各地で活躍しておられる会員の皆さまにはいまだお会いしていない方々が多くいらっしゃいますが、憲法を擁護する立場から民主的な税制・税務行政を求める同士の皆さまに、歴史と伝統ある税経新報の場をお借りしまして新年のあいさつができることをうれしく思います。

さて、昨今の税制はもとより、政治・経済・国際状況は不安定な状況であると誰もが感じるところではないでしょうか。景気の循環は、需要と供給のバランスによって決まるのであれば、例えば、介護需要は介護職員の待遇改善につながるはずです。しかし、そうはなっていないのはなぜでしょう。経済指標の中で最も正確なのは人口動態調査だそうです。考えてみればわかることですが、その年に生まれた子は減ることはあっても増えることはありません。戦争のような出来事が若い世代を戦地に赴かせ、結果犠牲となってしまうと、その世代、特に男子が少なくなってしまうという事はありました。しかし、これは将来予測の変更をするだけの話しで、少子高齢化社会の到来は必然であったわけであります。

働いても生活が楽にならないのは介護職だけではありません。多くの産業で非正規労働者が増加して正社員が減少しています。アベノミクスの影響で賃金が増えたといわれましたが、これはあくまで賃金総額の意味であって、平均賃金自体は下がっていたことが分かりました。これは、非正規の労働者がますます増えていることを示唆しているのでしょう。

このような事になったのは、社会の仕組みが変えられてしまったからではないでしょうか。消費税が導入された当時、故竹下首相は消費税制の懸念事項として逆進性の問題点を認識していました。しかし、8%増税を決めた野田民主党での3 党合意では「税と社会保障の一体改革」の美名でその改悪の実態を隠してしまいました。繰り返しますが、人口動態から少子高齢化社会は必然であったわけです。それでも逆進性の高い消費税を強化すれば、低所得者層ほど余計に生活が苦しくなります。派遣労働者の適用業種を拡大すれば、企業は雇用調整に利用しようとします。多様な働き方が可能というのは、人生の中でわずかな期間のためであり、それと引き換えに安定した労働環境、つまり終身雇用という制度が奪われてしまったのです。

今年は申年で年男です。全国の皆さまのお力をお借りして頑張りたいと思います。

(いのうえ・もとゆき)

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