税経新人会の皆様、「税経新報」読者の皆様、新年明けましておめでとうございます。
昨年12月14日、都内での講演会において安倍総理は「マスコミや野党から頑張れと言われたら調子が狂う。批判を受ければ受けるほど、やってやろうという闘志がわいてくる」と述べたと報道されました。安倍総理の「批判を受ければ受けるほど闘志を燃やす」政治は私たちにとっていかなるものか?年初に当たって確認しておきたいと思います。
安倍内閣が発足して以来、二つの顔(政策目標)があると言われています。その一つが「世界で企業が一番活動しやすい国を目指す」と言う財界待望の政権としての顔です。法人税の3年連続の減税、武器輸出の解禁による軍需産業の拡大や防衛費の3年連続の増加、原発の再稼働や輸出のトップセールス、TPPの推進など財界の要望に積極的に応えてきました。さらに、アベノミクスの幻影で円安と株価の上昇を作り出し経済の好景気を演出してきました。アベノミクスは私たちに何をもたらしたでしょうか?
安倍政権になった12年10月と15年9月を比較すれば、貯金ゼロ所帯は26%から30.9%に、生活保護所帯は156万8000所帯から162万9000所帯に、非正規労働者は1775万人から1971万人にと格差と貧困が拡大しています。年末の与党の消費税議論では「低所得者対策に食料品減税」と報じられました。消費税を10%に増税することを既定の路線とし、一部据え置くという「まやかしの軽減税率」であり、法人税減税や防衛費拡大のツケを庶民に転嫁するものであり、生活破壊の消費税増税は許すことはできません。さらに、永久派遣を可能にする派遣法改悪や解雇の金銭解決を可能にする制度の導入を進めようとしています。ここには、人間性の欠片も人間の尊厳も感じることができません。
もう一つの顔は、「戦後レジームからの脱却」「憲法改正が私の使命」とする改憲の顔です。
「自民党の中でも健全な保守的な考えを持つ議員がヘゲモニーを握り主流派になっていくことが求められています。その際は外国人参政権、夫婦別姓、人権擁護法案などの問題に対して明確な態度をしめしているかが一つの基準」(ワック「WILL」10年8月号)と述べ、改憲を踏み絵にして多数派を形成してきました。その理念の底にあるのは「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたい」という憲法前文を「これから自分たちは、そうした列強の国々から褒めてもらえるよう頑張ります、という妙にへりくだった、いじましい文言」(「新しい国へ」文春新書13年)ととらえるように、敗戦を屈辱と見る歴史観、屈辱の憲法観です。
そして、自民党改憲草案にみるように、憲法13条「個人として尊重」、第24条「個人の尊厳と両性の本質的平等」を削り「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。」家族は互いに助け合わなければならない。」と個人の尊厳や人権擁護の思想は微塵もありません。
「わたしが政治家を志したのは、ほかでもない。わたしがこうありたいと願う国を作るためにこの道を選んだのだ。政治家は実現したいと思う政策と実行力がすべてである。確たる新年に裏打ちされているなら、批判はもとより覚悟のうえだ」(前掲書)。日本国憲法が拠って立つ国民主権のもとでは、政治家は国民の信託に基づいて政治を行い憲法尊重擁護義務を負うものです。主権者の声を無視して「わたしがこうありたいと願う国をつくる」ことは、民主主義と立憲主義の破壊であり、独裁者の論理です。
代表者が暴走するならば、主権者が起って倒すしかありません。「野党は共闘」の市民の運動が勝利する年にと願います。 |