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時潮 国税庁統計にみる格差社会 |
税制問題検討委員会・委員長米澤 達治 |
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日本社会が格差社会と言われるようになって久しい。これは、1987 年(昭和62 年)頃から1991 年(平成3 年)頃までのバブル経済が崩壊して、それ以降低迷している経済社会の中でじわじわと進行してきた現象であると考えられる。
以下、国税庁の統計からその一端を見てみたい。
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区分 | 平成15 年 |
男 | % | 女 | % | 計 | % |
300 万円以下 | 5,249 | 18.7 | 10,819 | 65.1 | 16,068 | 36.0 |
300 万円超600 万円以下 | 13,954 | 49.8 | 4,938 | 29.7 | 18,891 | 42.3 |
600 万円超900 万円以下 | 5,936 | 21.2 | 652 | 3.9 | 6,588 | 14.8 |
900 万円超1,500 万円以下 | 2,425 | 8.7 | 181 | 1.1 | 2,607 | 5.8 |
1,500 万円超2,500 万円以下 | 381 | 1.4 | 31 | 0.2 | 412 | 0.9 |
2,500 万円超 | 89 | 0.3 | 7 | 0.0 | 96 | 0.2 |
計 | 28,033 | 100.0 | 16,628 | 100.0 | 44,661 | 100.0 |
区分 | 平成25 年 |
男 | % | 女 | % | 計 | % |
300 万円以下 | 6,638 | 24.1 | 12,381 | 65.4 | 19,019 |
40.9 |
300 万円超600 万円以下 | 13,438 | 48.8 | 5,529 | 29.2 | 18,968 | 40.8 |
600 万円超900 万円以下 | 5,072 | 18.4 | 769 | 4.1 | 5,841 | 12.6 |
900 万円超1,500 万円以下 | 1,941 | 7.0 | 197 | 1.0 | 2,137 | 4.6 |
1,500 万円超2,500 万円以下 | 342 | 1.2 | 35 | 0.2 | 377 |
0.8 |
2,500 万円超 | 104 |
0.4 |
9 | 0.0 | 113 | 0.2 |
計 | 27,535 | 100.0 | 18,919 | 100.0 | 46,454 | 100.0 |
(国税庁「民間給与実態統計調査)
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上記の国税庁の統計資料によれば、平成15 年と平成25 年を比べると年収300万円以下の給与所得者は、約295 万人増加している。また、年収300 万円超600万円以下の給与所得者も数では増えているものの比率では1.5%減少している。
一方、民間企業の役員報酬はどうなっているのだろうか? 東洋経済ONLINE2015 年1 月30 日付の「初公開!『役員報酬が多い』500 社ランキング」によれば、平均役員報酬が1 億円を超える企業は23 社あり、1 位はエイベックス・グループ・ホールディングの24,620 万円で、2 位はミスミグループ本社の24,383 万円、以下ファーストリテイリングの24,000 万円、スターバックスコーヒージャパン22,000 万円、カシオ計算機21,317 万円、日産自動車21,300 万円と続く。そして、ここで注目すべきは、従業員の平均年収との差である。ミスミグループ本社が55 倍、スターバックスコーヒージャパンは40 倍、エイベックス・グループ・ホールディングとファーストリテイリングが33 倍、日産自動車28 倍である。企業の役員であるということはそれなりの責任ある立場があるから報酬も高額になるということは理解できる。しかし、この格差はなんなのだろうか。今の役員報酬を少し下げ、それを従業員に給与として還元すれば、それが消費支出にまわり、景気を押し上げる原動力になり、世の中がもっと明るい方に向かうのだと思う。
結局、今の日本は、ごく一部の富裕層と数多くの貧困層が存在するという歪んだ構造となっているのだ。さらに言うならば、一部の大企業群が溜め込んでいる内部留保である。2013 年には資本金10 億円以上の大企業の内部留保は、285 兆円になったと言われている。その5 年前の2008 年には241 兆円であったものが、年平均8.8 兆円積み増している計算となる。その一方で、平均給与は、2008 年が4,296 千円であったものが、2013 年には4,090 千円と206 千円減少しているのである。つまり、大企業は、労働者の賃金を抑えて、自分ら経営者は先に見てきたような高額な役員報酬を得て、その上で、巨大な利益を内部留保に積み増しているということである。
このような現状は、日本の将来と私たち国民の未来にとってどのような意味を持つのであろうか。
第一に、経営者が近視眼的視点から利益追求に走り、企業の社会的責任を忘れている点である。賃金を切り下げそのために非正規雇用を増やして、そのことによる労働者や地域社会との矛盾を果てしなく拡大しているのだ。そして、短期的には内部留保を増大させ、高額な役員報酬を得たとしても、長期的には労働者国民の支持を失って、低迷していくであろうことは明らかである。
第二に、労働者は、低賃金と長時間労働の中で新しい技術の習得や能力の向上がしづらくなり、結局企業力の質的向上ができず、企業の競争力は低下する。特に、現在衆議院で審議中の労働者派遣法「改正」案は、「正社員ゼロ法案」(福島みずほのドキドキ日記)と言われるように一生派遣労働者で終わることも考えられ、益々労働者のやる気を削ぐ内容となっており、労働者の質の向上が阻害されることは間違いないと思われる。
第三に、大企業が利益をより多く生み出すためにコストダウンを強めることは下請企業である中小零細企業を疲弊させ、将来は日本には大企業しか存在ないといったいびつな産業構造を作り出すことも考えられる。
このような問題点を持つ現在の状況は、国民諸階層の力で改めさせ、大企業や富裕層に相応の負担を求めるよう税制を改革し、大企業も労働者国民と力を合わせてより良い日本の未来を作り出していくことが重要である。 |
(よねざわ・たつじ:東京会) |
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