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時潮

時潮
安倍政権の暴走を許してはならない

理事長 戸谷 隆夫
税経新人会会員の皆様、「税経新報」読者の皆様、新年明けましておめでとうございます。

昨年は、税経新人会全国協議会創立50周年の節目を飾る第50回東京・浅草全国研究集会を450名を超える参加者で開催し、記念シンポジウムでは、憲法の平和主義、生存権、国民生活のあらゆる面で危機が進行している現状が明らかにされました。

今年の年明けは、社会保障や国民のくらしにおいても、平和を守る課題についても極めて重大な事態の中で迎えました。

消費税を8%に上げた昨年4月以来、4月から6月の国内総生産は前年比マイナス7.1%に下落しました。政府は「消費税の駆け込み需要による反動」と「想定内」を強調しましたが、7月から9月でもマイナス1.9%となり、増税不況に陥りました。人為的な円安誘導は、一部の輸出企業が史上最高益を更新し内部留保を増大させましたが、自動車輸出の4月から9月では前年の同期に比べて4.9%減少(自工会のまとめ)するなど円安は進めど輸出は減少。輸入物価の上昇という副産物だけがもたらされています。株価の上昇で一部の富裕層は恩恵を受け、株を保有しない87.9%の国民はアベノミクスによって物価が押し上げられたため実質賃金は16ヵ月連続で減少し、貧困と格差が一層拡大しています。

平和の問題でも、歴代政権が憲法の平和主義の下で制限してきた「武器輸出三原則」を「防衛装備移転三原則」に改変して武器輸出や共同開発を可能にし、憲法九条の許す範囲を超えるものとして禁じてきた「集団的自衛権の行使」を閣議決定で容認するなど、解釈改憲で他国の戦争に加担する道に踏み出しました。

国民の目先を変えるべく行った内閣改造は、目玉であった小渕、松島の女性大臣が政治資金の不正や公職選挙法違反疑惑で早々に辞任し、内閣支持率が三か月連続で5割を切り不支持率が上昇するなど第一次安倍内閣を想起する事態になってきました。

その様な中で、安倍首相は消費税を2015年10月から10%に再増税することを1年半延期することを決めたうえで、11月21日に衆議院を解散し、年末選挙を突然挙行しました。

解散前の衆議院での自民党・公明党の与党勢力は、改憲の発議も可能となる3分の2を有し、任期も2年を余す状況でした。国会では、「特定秘密保護法」を衆参合わせて66時間の審議時間で両院とも強行採決を行うなど数を背景に強硬な運営を可能としてきました。また、日本銀行総裁やNHK会長、経営委員、内閣法制局長官など自己に都合の良い人事を強行していました。

本来、政府にとって都合の良い勢力を有しているにもかかわらず解散・総選挙を行ったのは、国民の不満が増大し自衛隊法改悪などの戦争参加の法整備に影響を与えられることを恐れて、「国民の信任を得た」と強硬に進める狙いがあったと思います。

選挙戦は、「道半ばのアベノミクス」「賃金も雇用も改善されている」と国民に幻想を振りまき、マスコミには「公平中立な報道」と圧力をかけて批判的な意見を封殺するなど異常さが際立ちました。

選挙の結果は、自民党・公明党で改選前の325議席を獲得して3分の2以上の議席を維持しました。首相は「2年間の安倍政権の信任をいただいた」と表明し「安全保障法制を次の通常国会でしっかり整備していきたい」(NHKインタビュー)と述べていましたが、思惑どおりと言えるのでしょうか。

総選挙の結果の最大の特徴は、安倍政治の補完勢力(維新・旧みんな、次世代など。私は民主党も同列とみますが)が後退し、貧困と格差の拡大の道、他国の戦争に参加する道を拒否する人達が、それを主張する政党に1票を託したことで共産党が議案提案権・党首討論に参加できる議席を与えられたこと、そして新しい共同の方向が沖縄の全小選挙区で自民党の敗北をもたらしたことにあると思います。

沖縄では、オスプレイの配備に端を発して2013年1月に県内41のすべての自治体の首長、議会議長、県議会各会派が、普天間基地の撤去・廃止、県内移設断念、オスプレイ配備反対を掲げ「オール沖縄」の総意である「建白書」を安倍政権に手渡し要請しました。しかし、自民党国会議員と県連が自民党本部の圧力に屈し、仲井真知事も埋め立てを承認する事態になりました。戦前戦後一貫して犠牲を強いられてきた県民の中に失望と怒りが広がり、県民の総意を尊重することが民主主義国家ではないかと、保守も革新もなく、経済界も市民団体も一緒になり「建白書」の実現という点で一緒になって戦おうと昨年7月27日に「沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」が結成されました。安倍政権と仲井真知事が辺野古移転・埋め立てを強行実施という実力行使に出る中で、11月には「島ぐるみ選挙」で新基地建設に反対する翁長新知事を誕生させ、突然の総選挙でも「オール沖縄」の戦いと保守・革新の枠を超えた共同を維持し全選挙区勝利に結びつけました。

翁長知事の「イデオロギーよりも沖縄のアイデンティティー」という言葉に共感します。日本のアイデンティティーは何か?私は、何よりも国民の基本的人権が尊重され文化的で人間らしい暮らしが保障される社会「公正な社会、公正な税制」だと思います。

一見、与党の圧勝の様に見えますが、派遣法改悪反対、TPP反対、集団的自衛権行使反対、特定秘密法廃止の声は6割を占めています。これが国民の民意です。

消費税についても、8%に増税したことに反省もなく2017年4月には経済状況の検討もなく10%にする。財界の要求に応えて法人税を減税し、事業税の外形標準課税の中小企業への拡大など中小企業への課税強化を代替財源とすることを政府は諦めてはいません。消費税増税中止、大企業・富裕層の応分な税負担、これが民意です。

暴走する自民党・公明党政権に対抗する「イデオロギーよりも日本のアイデンティティー」の国民の共同が始まる一年にしようではありませんか。

(とたに・たかお:名古屋会)

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