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時潮

時潮 次の50年に向けて
理事長 戸谷 隆夫
この度、7月の全国理事会で理事長に選任されました名古屋会の戸谷隆夫です。
全国の会員のみなさん、役員のみなさんのご指導、ご協力のもとで、微力ながら尽力したいと思っています。何卒よろしくお願いいたします。
今年の全国研究集会は、第50回の節目を迎え「納税者が主人公の税制・税務行政を目指してこれからの50年」をテーマに東京浅草で開催されます。併せて「50年記念誌」が、みなさまの手元に届くことになります。

この50年の歴史を振り返ると、税制では「国税通則法制定反対」「国税通則法改悪反対」などの闘い、税理士制度での税理士法改悪との闘い、牛島税理士訴訟をはじめとした税理士会の民主化の闘い、納税者の権利擁護の「納税者権利憲章制定」の活動、「売上税反対」「消費税反対」の運動、「春日裁判」をはじめとした強権的調査への対応や裁判の支援など、その時々の課題について研究活動でも、講師派遣や意見表明、署名活動など運動面でも輝かしい実績を残してきました。

これ等の活動を可能にした肯定的側面は、税経新人会が「日本国憲法の国民主権、戦争の放棄、基本的人権の尊重、地方自治の保障など民主的諸原則」を「みずからの職業を通じて、憲法にもとづく国民の諸権利を擁護すること」を基本理念とする団体であるからだと確信しています。

同時に、会則の前文で「しかし、いろいろな面においてこれらの民主的原則が、ないがしろにされつつある」と指摘しているように、ないがしろにしようとする勢力との闘いでもありました。

今、憲法をないがしろにしようとする策動が一層強まっています。

暴走する安倍内閣は、昨年12月6日に参議院で「特定秘密保護法」を強行採決して成立させました。特定秘密保護法第10条では国会の議会及び委員会において「秘密会」とされない限りは「特定秘密」を提供しないこととされており、国会の行政に対する牽制機能も国政調査権の行使も制限されるものとなっています。近代法の原則のひとつであり、日本国憲法にも引き継がれている租税法律主義は、その課税の根拠として、支出の目的が憲法の定めるところである「公共の福祉」に資するものであることを求めています。その予算審議において支出の透明性が「特定秘密」の指定によって制限されるとすれば租税法律主義は形骸化されることになります。施行させることなく、廃止を求める声を上げ続けなければなりません。

軍需産業に連なる財界企業の要請に応え「武器輸出三原則」を廃棄し武器輸出を可能とする「新武器輸出原則」を策定。7月1日には集団的自衛権の行使を禁じてきた憲法の解釈を変え、行使を認める閣議決定を行いました。

8月8日、米軍はイラク北部を空襲しました。イラクの問題は複雑な宗派対立であり、直前までファルージャの国連の運営する小学校や病院を政府軍が攻撃し1,000人を超える民間人が死亡していました。米国は、それらの政府軍の蛮行には非難もせず、北部で孤立するヤジド派の救援に必要な場合、米の権益・国民が危険にさらされた場合、イラク治安部隊が市民を守る場合に応じて空爆を実施するとしています。今回の空爆では米国民の駐留をその理由のひとつに挙げています。フランスのオランド大統領は「(行動に)参加する用意がある」と声明を発表。英国も人道物資の投下を計画しています。

しかし、この事態を招いた第二次イラク戦争の国際法上の根拠は何だったのでしょうか?国連の集団的自衛権の行使では困難とみた米国は、「先制的自衛権」の行使と主張しイラクを攻撃しました。「自衛権」の主張は限定的どころか際限なく拡大し創設されるものだと歴史の教訓として記憶しておかなければなりません。

仮に、クルド自治区に日本の商社が進出し駐在員が居たとすれば、「邦人の救出」を理由に「(行動に)参加する用意がある」と拡大する事態が懸念されます。パレスチナのガザ地区では、イスラエルの無人爆撃機による空爆で多くの子供が殺されています。武器輸出に道を開き防衛相の肝いり(経財省ではない!)で米国企業と第1号の協定が締結されました。その武器はイスラエルに提供されるものと知られています。今、平和憲法を有する平和国家という国際的信頼が根底から覆されようとしています。先人が闘い守ってきた平和憲法を解釈改憲で無きものとすることは断固阻止しなければなりません。

安倍内閣の暴走に軌を一にしたのか意図はわかりませんが、東京税理士会、近畿税理士会、名古屋税理士会などで、突然、総会で「君が代」の斉唱が行われました。「君が代」に対しては歴史認識を含め様々な思いがあります。又、税理士法には国籍要件はなく、日本国籍を有しない会員が存在します。強制加入の公益団体である税理士会が、これらのことを無視して「君が代」の斉唱を押しつけることは許されない行為であり見過ごすことはできません。

税制においても、財界の要請である法人税引き下げ、消費税増税に舵を切り、代替財源として中小企業増税を打ち出しました。ここでも利益至上主義の勢力と国民の暮らしを守る勢力の鋭い対立があります。誤った「応益課税」「公平な税」の主張に対して的確に批判し、「応能負担原則」「所得の再分配」の旗を高く掲げようではありませんか。

次の50年が憲法に基づく国民の諸権利が輝き、国民の幸福が花開く時代にする為、今こそ税経新人会の出番。共に一歩を踏み出しましょう。

(とたに・たかお:名古屋会)

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