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時潮

全国協議会の課題と展望
理事長 佐伯 正隆
7月の全国理事会で理事長に選任されました東京会の佐伯正隆です。よろしくお願いいたします。全国の会員さん・役員さんのご協力のもと、税経新人会のさらなる発展のため微力ながら尽力したいと思っています。

事務局長を担当していた頃、各地の新人会の役員さんから、よく「中央」と言われました。労働組合では「中央本部」があり、その「中央」のことでしょうが、新人会は、その名のとおり「全国協議会」で、主体は各地の会でのそれぞれの活動にあります。全国の仕事は各地の会の活動などを紹介する、あるいは各地の会の活動がやりやすくなるための援助を行う、税経新報の発行を通じて諸理論、意見などを表明し、諸実務についても意見交換を図ることなどではないでしょうか。この点を基本に全国協議会の運営に務めたいと思っています。

私たち税理士を取巻く環境はますます厳しくなってきている一方、活動いかんでは展望も切り開ける状況ともなっています。いくつかの問題について考えてみたいと思います。
消費税の増税問題について

 消費税の税率を来年4月に8%、再来年10月に10%にするかどうか。法律は制定されていますが、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」の第18条では「消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、‥‥」と定められ、実施するかどうかの判断は、政府が今年10月初め頃に行うことになっています。

政府内部からも「‥‥デフレ脱却前に消費税を上げれば景気上向きの芽をつみ、経済活動が再び停滞する危険性もあります。国内外でデフレ下の増税を行い、経済が回復した例を私は知りません‥‥」(浜田宏一内閣官房参与)との声もあがっています。

ここ数ヶ月、中小企業の決算を担当したなかでの実感は、中小企業の景気は少しも良くなっていません。会社によっては、リーマンショック後の景気が悪かった頃の状況に近い会社もあります。

消費税は廃止すべき不公平な欠陥税制ですが、「消費税増税も仕方ない」と考えている方々も含め、現在の経済状況のなかでの消費税増税は中止すべきとの意見が多数を占めています。世論調査でも「中止・延期すべき」との声は75%にもなっています。中小企業の経営を守るために、地域経済の崩壊を許さないためにも消費税増税の実施を中止させましょう。
憲法改悪の動きについて

私たち税経新人会は、憲法にもとづく国民の諸権利を擁護することを研究・活動の基本とし、全国協議会の会則の前文にもそのことが謳われています。

憲法の改悪は、私たちの基本理念に真っ向から対立するものです。「基本的人権は侵されない」としている現行憲法の97条が廃止され、政府が国民の自由や権利を制限できることになれば私たち新人会の活動は大きく制限されることになります。また、9条が「改正」されれば「戦争ができる国」へ踏み出すことにもなります。
憲法を守り、その理想を現実のものとする努力こそが求められています。
共通番号制、税理士制度、原発廃止、TPPなど

5月24日個人情報を国が一元的に収集、利用する「共通番号制(マイナンバー)」法が成立しましたが、この法案を実施させない運動が広がっています。プライバシー侵害につながるだけでなく、社会保障の削減などに利用されることは明らかです。少なくとも個別番号制に変更すべきではないでしょうか。

最近、東京電力福島第一原発の建屋近くの地下水から高濃度の放射性物質が検出されていることが解り、1日あたり推定300トンの地下水が放射性物質で汚染され、海に流出しているとの試算が明らかになりました。福島原発事故の被害はますます広がっています。新人会では福島原発事故被害の完全賠償を求める運動に参加してきましたが、被害者の方々の苦労は大変なものです。技術的に未確立な原発は人類と共存することはできません。1日も早く「原発ゼロ」を決断することが必要です。

TPP交渉次第では、税務書類の作成を税理士の独占業務と定めている税理士法52条(税理士業務の制限)が保障している税理士の独占権を失いかねません。また、日本の農業を守らなければこの国の将来が不安定になることは明らかです。TPPから撤退させなければなりません。

その他、様々な問題が山積していますが、消費税増税問題、原発廃止問題などで世論調査を実施すれば私たちの意見が多数を占めるものと思われます。丁寧な議論を重ね一歩づつ多数意見を現実のものにするための努力を重ねたいと思います。
税経新人会を大きくしよう

税制、税務行政の民主化、税理士制度の改革などを進めていくためには税経新人会を大きくするとともに、私たちの主張・意見等を多くの税理士に知っていただくことが必要です。

来年9月予定の第50回東京・浅草全国研究集会を最高現勢で迎えようと各地の新人会で会員拡大が取り組まれています。
ぜひ成功させるとともに、税経新報の読者を増やしましょう。
全国協議会としても各地の活動の経験交流の場をもうける、税経新報の見本誌を作成するなどの取り組みを強めたいと思います。

(さえき・まさたか:東京会)

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