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時潮

安倍政権に思うこと・・・これから日本はどうなるのか
副理事長 武本 康夫
自民党政権から民主党政権に変り少しは変るかと期待したが、大した変化もなく前回の総選挙で、またまた自民党に逆戻り、自民党が支持されたというよりも、他に選ぶ政党がないので自民党になってしまったのが現実だと思います。今回の安部政権は、アベノミクス効果なのか、3か月がすぎて円安、株高となりそこだけ見れば景気回復の兆しが見えてきたかと思える状況となってきました。しかし本当に景気回復しつつあるのかと考えると疑問がわいてきます。

私のまわりの中小企業はそんな世の中の話がまったくピンと来ない状況です。現在の経済はグローバル化し日本だけが景気が良くなることはあり得ないことを考えると、世界経済の不透明、とくにユーロ圏の経済、財政の不安は(最近ニュースのトップに取り上げられる事が少なくなりました)依然解消されず良くなる兆しも見えない状況です。また今の円安を容認しているアメリカもいつまで容認するのかも不透明であり不安だらけです。

自由経済、資本主義ではインフレでなければ成り立たないのは明白であることから、安倍政権が目指す年2%のインフレは方向性は間違っていないと思われます。しかし現状は、円安により外国人投資家のマネーが日本の株式市場に入って日経平均を押し上げ、金融緩和の方向性を持続する経済政策で円安に振れるなど最近の為替は経済の実態に連動しないで、投機的な要素で動く傾向にあることを考えると、そんな状況下で本当にインフレ率2%をキープしながら経済成長を達成できるのか疑問に思います。まさかお札を大量に刷って貨幣価値の下落をするのではないと思ってしまいます。

また、安倍政権はそんな中、旧態依然の公共投資を図る以前のバラマキ政策を推し進めようとしています。戦後の日本の経済の高度経済成長を支えたのは、良質な商品を安く大量に生産、販売する事により会社が利益をあげ、それにより賃金が上昇し個人消費が進み、さらなる需要を呼ぶ、プラスの連鎖を起こしていました。それをさらに加速させたのが、国が借金(国債の発行)しその資金を公共事業に投資し、それにより経済のさらなる発展を促し税収の増により投資の回収を図るという構図を描き実行していました。

この構図は当初は効果が有りましたが、その後の産業構造の変化に対応せず、不況になれば同じことを繰り返した結果、我が国の借金は1,000兆円を超え(僅か30年たらずで生じたもの)てしまい、その経済成長によりインフレが進み、借金して物を購入すれば、インフレにより年々借金は目減り(インフレ分だけ実質返済と同じ効果)することにより、借金して物を買う(投資)ことが得である考えが充満しました。それが行き過ぎた結果がバブル経済であり、そのバブルの崩壊により長引く不況へと突入していった過去の経緯があります。借金して公共事業等にバラマキ政策でまた同じことを繰り返さないか心配です。

戦後の日本経済を支えていたのは、大企業は勿論ですが中小企業なくしては考えられません。東日本の津波の被害により、部品をつくる中小企業の操業が停止し、その部品の供給が止まったことにより大企業も操業の停止を招くなど中小企業の重要性を目の当たりにしました。これからは中小企業を政府主導でどの分野に次の日本を支える事業があるかを明確に定め、その分野に集中的に投資し世界的に競争力のある中小企業をつくり新たな雇用を作りだすことが肝要であると思います。

天然資源の乏しい日本にとって、人材は大きな資源です。これからの日本を支える人材の育成を考えると、ゆとり教育がもたらした影響は今の日本にとって計り知れない悪影響をもたらしたと思います。競争のない社会では人は成長も進歩も著しく減退します。人の評価を単一のもので評価することは間違っていると思いますが、社会に出れば競争のない世界はありません。そのようなゆとり教育の環境の中で育った子供達が大人になりその競争についていけずにドロップアウトしてしまうのかもしれません。現在の教育制度の在り方も早急に改革しなければ、その効果が現れるのに10年以上の期間を必要とする現実を考えると今後が心配です。

日本には10年、20年後はどうあるべきか、そのためにはどうすべきかを考える長期戦略はなく一つ一つの政策を実行する戦術はあると言われています。これからの日本はますます少子高齢化が進み、生産ラインもさらに海外にシフトしていくことになると思います。このような産業構造の変化にどのように対応し、将来の日本をどのような国にするか、今の政治家にその事を期待するのは無理かもしれません。最小限自分の老後は自分でケアできるようにしておくことが賢明な考えかもしれません。

(たけもと・やすお:神戸会)

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