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時潮

年末の顧問先との会話
副理事長 疋田 英司

先日、経営不振で苦戦している飲食店の顧問先が相談にみえた。ご主人はなんとか経営を立て直したいが、どうすればよいかとのこと。
なかなかお客さんがこなくて。
メニューに写真が少ないですね。
昔のままですので・・・。
それに住宅街に近い場所柄にしてはコース料理ばかりで、普段使いのお店という感じはないですね。
バブルの頃はそれでよかったものですから。
メニューから考えましょう。気楽に入れるようにアラカルトを増やしましょう。メニューも、食べたくなるような明るい写真に変更しましょう。
そうですね。
それと、料理やお店の雰囲気を知ってもらうためのチラシも必要です。お客様に知ってもらわないといけません。お昼のコースなどは・・・。
お店の雰囲気や、外観などの工夫を相談し、できるだけお金をかけずに集客する方法を相談した。デザイナーやカメラマンも紹介するなど、コンサルタントの話だ。その後、店のスタッフの話題になった。勤務シフトの立て方や、最低賃金制、パートさんの社会保険、労働保険、源泉徴収のことなど。少し税理士らしい会話になってきた。このあたりの話になると、事業者の負担のことに話題が移る。
いつもながら面倒ですね。法律できまっているとはいえ、間違えたり少しでも遅れたりすると加算税でしょ。明日の仕込みや経営のことも考えないといけないし。
そうですね。制度だから仕方ないとはいうものの、制度も毎年変わるし、これに追い付くのはたいへんなことだと思います。面倒なことは私どもにお任せください。
一人でやっていると、なかなか手が回らないし、先生への費用のほうも・・・。
源泉徴収制度はもともと戦費調達のために導入された制度だ。戦後も国に都合がいいと現在も残されている。しかし事業者の負担は大きい。本来なら国民一人一人の責任でしなくてはならない「税」や「社会保険」を、事業者は国に代わって従業員への給与から天引きする作業が求められる。国にとっては資金繰りにも役に立つし、便利な制度だ。事業者はこの作業を怠れば、原則としてペナルティが課される。税務署の徴収担当は給料をもらいながら税の徴収事務を行っている。しかし事業者は無償どころか罰を背景に義務を課されている。考えてみれば、同じ国民でありながら法の下の平等といえるのだろうか。いつも疑問がわく。話題は消費税の話に移る。
消費税をお客さんから頂かないといけないんですが、飲食代に上乗せするのはなかなか難しくて。
そうですね。転嫁の有無に関係なく消費税は払わないといけませんし、転嫁ができないと結果的に値下げにしかならないですよね。
値上げはなかなかしにくいし、消費税を乗せればって簡単にいうけど、不景気だから結局お客さんは安いほうに流れていきますしね。
勝ち残るだけの体力のあるところなら転嫁できますけどね。飲食業はなかなか難しい。
従業員への給与を払ったら毎月赤字ですよ。何とか売り上げを上げないと破産です。
源泉税の払いもありますし、社会保険の払いもありますし、資金繰りが大変ですね。
借金の返済も、いまでは金利だけにしてもらっていますが、来年の金融円滑化法が切れるとどうなるんですか。
今のままでは整理の対象になるかもしれません。何とかしないといけないかもしれませんね。
うーん。
どうされました?
もう、こんな商売やめたほうがいいですかね。消費税の税率も上がるし、社会保険料もどんどん上がるし、金融円滑化法が切れて借金の返済もきつくなるし・・・。景気は戻るんですかね。疲れましたよ。子どもの学費も必要だから、やめるにやめられないし・・・。
政府は消費税を消費者が負担する税だと伝えている。だから、いかに消費税を国民に転嫁するかが問題にされている。しかし、ご承知のように税法には消費税は消費者が負担する税とはどこにも書いていない。にもかかわらず、なぜ、消費税は消費者に転嫁する税という理解が進んだのか。消費税を払わないと泥棒呼ばわりする税務職員がでるのか。どれもこれも憲法を足場に作られていない制度の欠陥ではないか。国民の命と生活を守ってこそ国家である。来年はどのような年になるのか。総選挙の話題を最後に顧客と別れた。

(ひきた・えいじ:大阪会)


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