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時潮

社会保障と税の一体改革についての3党合意
研究部長 林 明

消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案をめぐる民主・自民・公明3党の修正協議は政府提出の消費増税案と自民党の社会保障制度改革基本法の修正案で6月15日未明に合意に達した。

3党合意はなにを合意したのだろうか。税制に関するところを拾い出してみた。
民主党のHP には(1)3党実務者確認書、(2)社会保障・税一体改革に関する確認書、(3)税関係協議結果、の3つの文書がでている。

税関係協議結果は前文で政府提出の税制抜本改革の2法案について以下のように修正することで合意した、とある(つまり、この協議結果に出てこないところは政府案のままという解釈でよいかと思います)。

この協議結果の文書には本文の文書と条文イメージがでている。
所得税と資産課税については条文イメージ「附則」のなかで、いずれも「平成24年度中に必要な法制上の措置を講ずる」としている。所得税の最高税率引き上げや相続税の基礎控除の縮小などは一旦棚上げということだ。

消費税については条文イメージのなかで、「低所得者に配慮する給付付税額控除等及び複数税率、簡素な給付措置」としてイ、ロ、ハ、とあり、ハでは給付付税額控除や複数税率の結論がでるまでの「暫定的及び臨時的な措置」として「簡素な給付措置を実施する」としている。

この「簡易な給付措置」について本文文書のなかでは、「簡素な給付措置の実施が消費税率の8%への引上げの条件であることを確認する」とあるが、具体的な検討はこれからということだ。

次に消費税増税実施時期に関する経済対策「附則18条」について。
本文文書ではもともとの法案の第1項に掲げた経済指標の数値は「政策努力の目標を示すものであること」と「消費税率の引上げの実施は、その時の政権が判断すること」を確認した、とある。

条文イメージでは第3項の最後に「経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。」としているが、本文の確認からすれば数値条件が実質的になくなったわけで、その時々の政権が判断すればよいということになる。

実施時期について政府案について修正がないので、平成26年4月から8%、平成27年10月から10%、はそのままということだ。
これら合意を受けて、政府・民主党は20日夜、社会保障制度改革推進法案と、 認定こども園改正案を衆議院に提出した。
国会の会期末をひかえ慌ただしい動きである。
20日提出された社会保障制度改革推進法案の要綱には社会保障制度改革の基本的な考え方について次のように書かれている。

1 自助、共助および公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していくこと。
2 ・3
4 国民が広く受益する社会保障に係る費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点等から、社会保障給付に要する費用に係る国及び地方公共団体の負担の主要な財源には、消費税及び地方消費税の収入を充てるものとすること。

社会保障の基本は「自助」「自立」ですから社会保障への公費負担を削減していきます、また社会保障の削減をされたくなかったら消費税の増税しかありません、ということか。

憲法25条はどこにいってしまったのか。
この合意については、内容もさることながら、3党で合意すれば事足れりとしていることにも大いに問題がある、国会軽視といえる。

3党合意に先立つ14日には日本共産党・みんなの党・社民党・新党きづな・新党大地・真民主・新党日本の野党6党は国会内で会談し、民主・自民・公明3党による消費税増税法案の修正協議に反対し、廃案にすることで合意し、3党に申し入れた。

大阪会がとりくんだ消費税増税に反対する署名は1万名を突破した。
署名へ応じてくださったのは、主には我々税理士事務所の顧問先である中小業者だ。
価格競争が厳しいなか、10%の消費税はとても価格に上乗せできない。結局会社の利益を削って支払うしかないが、10%利益が削られたら商売が成り立たない」といった声が多く寄せられた。

今回の一体改革で国民生活への負担は消費税以外の負担増をふくめ約20兆円に対し、社会保障給付の充実へは約2.7兆円といわれており、消費者は生活防衛からは支出の節約となり、少しでも安いものを買うということになるだろう。商品を供給する事業者間では売り上げ確保のため、価格競争はさらに激化するだろう。事業者は価格競争のためコストなかでも人件費削減に向かうだろう。すると勤労者の所得は減り、さらに節約に励むことになる。

これでは国の「財政破綻」のまえに国民生活が破綻してしまいそうだ。
消費税か社会保障かという問いかけがそもそも間違っている。

(はやし・あきら:大阪会)


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