民主党・野田内閣は3月30日、自らの党内での大混乱、国民新党の分裂を「乗り越えて?」消費税関連法案を閣議決定し、国会に上程した。
「成立に政治生命をかける」としている野田首相だが、何がそこまで首相に決意させるのか。日本の国家財政の危機を憂えてか、構造改革路線のもと後退してきた社会保障制度を元に戻し、少しでも充実させるためなのか。
かつて野田佳彦氏は消費税増税を批判していた。2005年1月の衆議院本会議で彼(当時は野党民主党の国会対策委員長)は小泉純一郎首相(当時)に質問、「消費税を上げ、医療費を引き上げ、定率減税を引き下げて、風邪から治りかけていた日本経済を肺炎にしてしまった。同じことをまた繰り返そうとしているのか」と増税批判を展開した。
2012年の今、日本経済は「風邪から治りかけている」状況ではなく、国民の生活と中小企業の経営は肺炎を患っているような状況である。こんな時期に消費税の大増税と社会保障の切捨てを実施すれば、国民の負担増は年間約20兆円(消費税のアップと年金支給の削減・医療費の窓口負担増などで)となり、肺炎どころか命にかかわる事態に陥る。
消費税の5%への増税後、税収の落ち込みと「景気対策のため」の財政支出で、国と地方の長期債務はわすが4年間で200兆円も増える結果となり、国と地方の税収も1996年度(5%への増税前)の90.3兆円から、2010年度には76.2兆円に減少している。消費税収が増えたからといって全体の税収が増えることにはならない。
消費税(法)には拭い去れない不公平・矛盾がある。1つは所得の低い人ほど税負担率が高く不公平であること。孤立死・孤独死などの痛ましい事体が急増しているなか、亡くなる直前に食べた「おにぎり1個」にも容赦なく消費税が含まれている。最低限度の生活に対し課税することは許されない。
2つ目は消費税の負担者が曖昧である。「理論的」には、企業は消費税を1円も負担しない。「皆で分かち合おう。力を合わせてオールジャパンでこの日本を立て直す」などの声が財界・政府から聞こえてくるが、大企業は消費税を負担しない(蚊帳の外である)。企業が消費した交際費・福利厚生費・水道光熱費などに消費税負担はない。しかも消費税は価格に転嫁することから、競争力の強弱などによって転嫁できる企業とできない企業間に差別を生むという問題を内在している。
さらに輸出戻し税の問題もある。2010年度の消費税収は納税申告額9兆5,145億円、還付申告額2兆0,271億円、税関の課税分2兆4,984億円(消費税4%分、国税庁統計資料より)これをどう見るか。意見は分かれるかもしれないが、消費税収の約22%が還付にまわされている事実は余り知らされていない。国民はどう受け止めるのだろうか。
消費税の大増税は、くらしと経済をどん底に突き落とし、財政危機をさらに深刻にし、この国の未来を危うくするものである。
消費税に頼らない社会保障と経済・財政の立て直しの道はある。
それでも「日本の財政悪化や経済の停滞」を心配し、消費税の引上げはやむを得ないと思っている国民も多数いる。増税といえば消費税の増税しか議論されないが、資本金10億円以上の大企業の内部留保額はこの10年で約167兆円から約260兆円に増加した。リストラ・賃下げが推し進められたこと、税負担が軽くなったことなどがその原因であり、政治の責任で応能負担原則にそった税制を構築すること、労働法制の抜本改正をすることなどが強く求められる。八ッ場ダムや「1メートル1億円」の東京外郭環状道路などムダな大型開発の復活をやめ、F 35戦闘機などの無駄づかいをやめることが求められる。
今年2月、日本共産党が「消費税大増税ストップ! 社会保障充実、財政危機打開の提言」を発表し、全国各地で各界・各層との懇談を行なっている。
「構造改革」路線で、大きく崩された社会保障制度などの立て直し(第一段階)と最低年金制度の創設、医療費の窓口負担の無料化など(第二段階)を提言している。
第一段階での財源は、大型開発や軍事費をはじめ税金のムダづかいの一掃と、富裕層・大企業優遇の不公平税制の見直し、新たに「富裕税」「為替投機課税」「環境税」の導入などで、第二段階の財源は、国民の所得を増やし経済を内需主導で健全な成長の軌道にのせ、国民全体で、応能負担能力にもとづき、消費税に頼るのではなく、累進課税を強化する所得税の税制改革によってまかなう。また、法人税の引き下げ競争を見直す国際的な働きかけをすすめ、下げすぎた法人税率の適正な引き上げを行なう。などを具体的な数値も掲げ提言している。
税金の無駄づかいにもっと切り込む、税制については消費税の廃止の展望や法人税の超過累進課税制度の導入など大胆な提案も欲しかったが、現実的な提案がされ、各地で保守層も含め高い評価を受けている。
消費税に頼らない社会保障と経済・財政の立て直しの道があることを多くの国民に伝え、未来のために、消費税の大増税をストップさせる運動に力を注ごう。
(さえき・まさたか:東京会) |