真に納税者の権利を確立するための納税者権利憲章の制定及び 国税通則法の改正を求める決議
政府は、平成23年度税制改正法案に「国税通則法の一部改正」(以下「改正」案という)を盛り込んだが3月末までに成立せず、6月22日、三党合意(民主、自民、公明)により、平成23年度税制改正法案を二つに分離し、その一つを成立させ、通則法の「改正」案については引き続き協議(会期中に成案にならない場合は閉会中審査)するとした。
「改正」案は、第一条の目的に「国税に関する国民の権利利益の保護を図りつつ」という文言を追加し、「納税者権利憲章」の制定を新設、「国税の調査」と題する一章を新設して税目ごとにあった質問検査権の条項を横断的に定めるなど、50年ぶりの大幅な「改正」を行おうとしている。
しかし、この「改正」案は、法律名を「国税に係る共通的な手続き並びに納税者の権利及び義務に関する法律」に変更するとし、納税者の義務が強調されている。このことに象徴されるように、「国民の権利利益の保護」を謳いながら、その中身は課税権限の強化と納税者の義務強化につながる重大な「改正」が盛り込まれている。
納税者権利憲章は、国税庁長官が一連の税務手続きについて平易な表現を用いて簡潔に記載した文書を作成してこれを公表するというものだが、これでは単なる行政文書で、納税者権利憲章を名乗ること自体欺瞞に満ちている。憲章には少なくとも納税者の基本的人権を確保する上で欠くことができない納税者の権利、すなわち「納税者が納税に関して行った手続きは誠実に行われたものとして尊重する誠実性推定の原則」及び「プライバシー保護の原則」を入れるべきである。
税務調査の手続きについては、税務調査の現状を法律において明文化したと説明されているが、質問検査権についての定めでは、現行の「調査について必要があるとき」は「質問し」「帳簿書類その他の物件を検査し」に、新たに「当該物件の提示若しくは提出」の権限が追加されている。加えて「提出された物件を留め置くことができる」と定めている。
しかも、提示及び提出については、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金の刑事制裁が新設されている。このことだけでも「改正」案は課税権限の強化であることは明白である。
そのほか、(1)文書による事前通知の内容に「調査の理由」が欠如していること、(2)文書による事前通知をしない例外規定を設けて事前通知しないことを法定化していること、(3)増額更正期間を現行の3年から5年に延長すること、(4)修正申告の勧奨を法制化すること、(5)調査の終了通知書が交付されても再調査ができるとしていること、(6)すべての処分について原則として理由附記をするといいながら、所得300万円以下の白色申告者に記帳義務・記録保存義務を課そうとしていることなどがあげられる。
したがって、私たちは真に納税者の権利が確立されるための納税者権利憲章の制定と国税通則法の改正を強く求めることを、ここに決議する。 |