新人会記事

第47回加賀全国研究集会 特別決議

脱原発の社会を求める決議

本年3月11日に発生した東日本大震災、とりわけ福島第一原子力発電所の事故は市民生活に深刻な被害や影響を及ぼし、いまだ解決の道筋は不透明な状況にある。

1955年12月19日に原子力基本法が成立し、それから今日まで半世紀余りにわたる日本の原子力政策の特徴は、国家安全保障の基盤維持のために先進的な核技術・核産業を国内に保持するという方針を不動の政治的前提としていることである。

原子力開発利用を担う経済産業省の主導のもとで利権を有する所轄官庁、電力業界、政治家、地方自治体、メーカー、原子力開発研究者、メディア間で政策が定められてきた。そこには市場原理や競争原理が働く余地はない。「国家安全保障のための原子力」とは、日本の核武装は控えるが、核武装のための技術的・産業的な潜在能力を保持する方針をとり、それを日本の安全保障政策の主要な一環とするということである。

つまり、先進的な核技術・核産業を持つことが国家威信に繋がるというのである。

原子力政策の安定性を保証するためには、それを担う民間業者・自治体などに、数々の経済的支援装置が提供されてきた。つまり、国策協力の見返りとして、立地支援や研究開発支援をするために電源三法が作られ、その中の一つである電源開発促進税が目的税として使われてきた。また電力業界の利益を保証するために総括原価方式が作られ、損害賠償支援をするために原子力損害賠償支援法が作られ、また今回東電支援のための原子力損害賠償支援機構法が作られた。

以上のように、今日の原子力政策の特徴は、政府の手厚い指導・支援措置によって、電力業界の原子力事業を支え、その経営リスクを軽減し、それによって原子力発電規模の堅持と核燃料サイクル事業の整備を進めることを主要課題としていることである。

電力業界の経営リスク軽減は、国民が高いリスクを肩代わりすることを意味している。したがって私たち国民は主権者・納税者・消費者として、これに無関心では済まされない。この半世紀余り私たちは、エネルギー政策について「知らしむべからず、依らしむべし」とされてきた。しかし今回の福島第一原発事故によって、政府が掲げていたエネルギーの安定供給の優位性や地球温暖化防止に役立つという原発推進の根拠が崩れた。放射能汚染は、福島県双葉郡のみならず東北地方や関東地方や中部地方にまで及んでいる。原発の安全神話に私たちはもう騙されない。

原発は水力発電や火力発電など他の発電施設と質的に違う。発電コストに矮小化してはならない。原発の危険性の本質は、「死の灰」を無害化できる技術を持っていないということである。何十万年後の子孫にまで核汚染の危険を押し付けつけ、核兵器開発と表裏一体の「原発」はやめ、持続可能な再生可能エネルギー社会へ移行し、核のない社会を構築することを強く求めるものである。
2011年9月10日
税経新人会全国協議会
第47回加賀全国研究集会

真に納税者の権利を確立するための納税者権利憲章の制定及び
国税通則法の改正を求める決議

政府は、平成23年度税制改正法案に「国税通則法の一部改正」(以下「改正」案という)を盛り込んだが3月末までに成立せず、6月22日、三党合意(民主、自民、公明)により、平成23年度税制改正法案を二つに分離し、その一つを成立させ、通則法の「改正」案については引き続き協議(会期中に成案にならない場合は閉会中審査)するとした。

「改正」案は、第一条の目的に「国税に関する国民の権利利益の保護を図りつつ」という文言を追加し、「納税者権利憲章」の制定を新設、「国税の調査」と題する一章を新設して税目ごとにあった質問検査権の条項を横断的に定めるなど、50年ぶりの大幅な「改正」を行おうとしている。

しかし、この「改正」案は、法律名を「国税に係る共通的な手続き並びに納税者の権利及び義務に関する法律」に変更するとし、納税者の義務が強調されている。このことに象徴されるように、「国民の権利利益の保護」を謳いながら、その中身は課税権限の強化と納税者の義務強化につながる重大な「改正」が盛り込まれている。

納税者権利憲章は、国税庁長官が一連の税務手続きについて平易な表現を用いて簡潔に記載した文書を作成してこれを公表するというものだが、これでは単なる行政文書で、納税者権利憲章を名乗ること自体欺瞞に満ちている。憲章には少なくとも納税者の基本的人権を確保する上で欠くことができない納税者の権利、すなわち「納税者が納税に関して行った手続きは誠実に行われたものとして尊重する誠実性推定の原則」及び「プライバシー保護の原則」を入れるべきである。

税務調査の手続きについては、税務調査の現状を法律において明文化したと説明されているが、質問検査権についての定めでは、現行の「調査について必要があるとき」は「質問し」「帳簿書類その他の物件を検査し」に、新たに「当該物件の提示若しくは提出」の権限が追加されている。加えて「提出された物件を留め置くことができる」と定めている。

しかも、提示及び提出については、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金の刑事制裁が新設されている。このことだけでも「改正」案は課税権限の強化であることは明白である。

そのほか、(1)文書による事前通知の内容に「調査の理由」が欠如していること、(2)文書による事前通知をしない例外規定を設けて事前通知しないことを法定化していること、(3)増額更正期間を現行の3年から5年に延長すること、(4)修正申告の勧奨を法制化すること、(5)調査の終了通知書が交付されても再調査ができるとしていること、(6)すべての処分について原則として理由附記をするといいながら、所得300万円以下の白色申告者に記帳義務・記録保存義務を課そうとしていることなどがあげられる。

したがって、私たちは真に納税者の権利が確立されるための納税者権利憲章の制定と国税通則法の改正を強く求めることを、ここに決議する。
2011年9月10日
税経新人会全国協議会
第47回加賀全国研究集会

「社会保障と税の一体改革」に反対する決議

政府は、6月30日、2010年代半ばまでに消費税を段階的に引き上げ、10%にする大増税計画をもりこんだ「社会保障・税の一体改革」の成案をまとめ閣議報告し、2012年1月から始まる予定の通常国会までに、「子供・子育て新システム」、「診療報酬・介護報酬改定」、「医療・介護の基盤整備の法整備」、「保険制度改正」、「年金現行制度の改善」、「新年金制度」、「番号制度」、「税制改正」などを全て取りまとめるとしている。

その内容は、「社会保障のため」といいながら医療費の窓口負担の引き上げ、保育の公的責任の放棄、年金の支給開始年齢の引き上げなど社会保障を切捨てるとともに、社会保障にかかる公費のすべてを消費税収でまかなおうとするもので、「社会保障は消費税収の範囲内で」と、とめどない消費税増税か、社会保障の大幅削減か、を国民に迫るものである。

消費税は「あらゆる世代が広く公平に分かち合う税金」だから社会保障の財源にふさわしいとしているが、低所得者や中小企業にずしりと重い消費税は最も不公平な税金であり、社会保障にふさわしいどころか、社会保障の所得再分配の役割を破壊する税金である。

また、大企業にとって消費税はすべて価格に転嫁して実質的に負担のない税金であるが、多くの中小企業は消費税を価格に転嫁できず苦しんでいる。

消費税の大増税は日本の経済の基盤と地域社会を支えてきた中小企業の営業と生活を破滅に追い込み、日本経済を冷え込ますととともに地域社会を破壊するものである。

さらに、「一体改革」では、法人実効税率の引下げ、所得控除の縮小あるいは税額控除の導入による生活費非課税の原則の放棄、相続税の庶民増税、共通番号制度の導入なども計画されている。

消費税の導入以降、法人税率、所得税の最高税率、相続税の最高税率の引下げが行われ続けてきたことなどにより、国の財政状態が悪化し、格差が広がってきた。

今、求められるのは、近代社会の税制の原則であり、憲法が求める応能負担原則にもとづいた税制を構築するとともに、国民の生活を支援し、国民の懐を暖め、景気を回復させる諸政策を実施することである。

私たちは社会保障の改悪と消費税の税率引上げを狙う「社会保障と税の一体改革」に断固反対する。
2011年9月10日
税経新人会全国協議会
第47回加賀全国研究集会

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