政府は2010年6月18日に中小企業憲章を閣議決定した。中小企業憲章については納税者権利憲章より知名度が薄いのではと思われるが、この中小企業憲章制定運動は7年も前から進められている。ヨーロッパでは小企業はヨーロッパ経済のバックボーン(背骨)であるとして小企業憲章を制定している。この事に刺激された中小企業家同友会全国協議会がそれ以来会内で学習を進めてきており、国会決議をめざしていたが、この度民主党政権が閣議決定したのである。中小企業家同友会では、この憲章を評価しながら会内、会外への周知行動を起こしながらも、さらに国民的なものにしようと、内容をより高めて国会での制定運動を進めている。
この閣議決定された中小企業憲章について、中小企業企画課長宮本昭彦氏は、憲章は一朝一夕に変えるものではないので抽象的な部分がある、また閣議決定の意義について、国会決議が一番重いものであるが、閣議決定はその次に重いものであり、全閣僚一致で決められる。全閣僚が責任を持ち、政府決定としては一番重いものであると言っている。
我が国における企業数は421万社で、その内中小企業420万社99.7%となっている。常用雇用者は、3,633万人で、その内中小企業が2,405万人66.2%(中小企業白書2009年版より2006年分)。
これに対しての国の予算は中小企業対策費22年度予算額が1,911億円、23年度要求額2,259億円である。財政投融資の中小部分も当初計画23,401億円、23年度計画21,251億円である(平成22年8月 中小企業庁 概算要求・財政投融資要求等の概要より)。
何ともお粗末な予算配分要求である。
税制面では、優遇税制、消費税の不公平により、大企業への有利な税制がまかり通っている。最近の税制論議では、消費税の税率アップが当然のように報道され、法人税の減税も取りざたされている。
大企業は中小企業と違って大きな力があり、消費税の価格への転嫁が容易である。中小企業は競争力が低く消費税の価格転嫁は容易ではない。
ここ数年の小泉政権からの構造改革、新経済政策における規制緩和等により中小企業は大企業との競争の場にさらされ中小企業の存亡が問われているのが現状である。
また菅内閣は内閣改造後、ますます財界・大企業の政策実行の布陣を敷いて来ている。中小企業は自らの努力は当然の必要であるが、弱い存在でもあるので政策的な援助が必要である。
中小企業憲章は、基本的に弱者である中小企業を守り育てる精神で成り立っている。
私たちがこれをよく理解し、私たちサイドで利用することで、現在進められている新成長戦略との矛盾が露呈する事となり、この憲章は活きてくる。消費税増税への反対行動、法人税減税への反対行動も憲章に基づいて発信することでより多くの賛同を得ることへとつながる。この憲章に基づいた行動は、行政官僚も無視することは出来ないし、むしろ協力してもらうことも可能である。官僚を巻き込んだ運動へとつながる可能性がある。
私たちは、この中小企業憲章をしっかり読み解き、クライアントや各種中小企業団体と協力しながらこれを生かすことを課題としたい。
ちなみにこの中小企業憲章は冊子として印刷されており、中小企業庁が配布している。またインターネットからも入手可能である。
(やまもと・ともはる:九州会) |