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時潮

消費税増税大合唱に国民的反撃を
全国協議会 組織部長 相田 英男

総辞職に追い込まれた鳩山政権のあとを継いだ菅政権は6月11日に所信表明演説をおこない、普天間問題では、日米合意を踏まえると表明。同時に、将来の税制について、今国会に、自民党から消費税増税の方針を明示した「財政健全化責任法案」が提出されたことに言及し、消費税の税率引き上げを視野に、超党派の「財政健全化検討会議」の設置を呼びかけました。

自民党の「財政健全化責任法案」では、「党派を超えた国会議員により構成される会議を設置し・・・」とあり、自民党の呼びかけに民主党がのった形です。消費税増税で民主と自民の二大政党が大連立するということでしょうか。

消費税増税発言は菅内閣の閣僚から相次ぎ、自民、公明の議員からも、さらに、社民党の閣僚経験者からも出るありさまです。有力紙でも、「社会保障を充実させていくためなら、ある程度の負担増は引き受けざるを得ない・・・」(2月17日「朝日」社説)と主張しています。まさに消費税増税の大合唱です。

この増税大合唱によってか、世論にも変化が見られます。「衆院選後の消費増税を含めた税制抜本改革の検討」に「賛成」59%、「反対」27%でした(6月10日「日経」)。半年ほど前の「読売」でも、社会保障制度を維持するため、消費税率引き上げはやむを得ないと思う人は61%で、「そうは思わない」37%を大きく上回りました(2009年11月24日)。

2年前の2008年7月の「毎日」では、消費税率の引き上げに「反対」61%、「賛成」30%でしたから、賛否が逆転しています。
「読売」は、「増え続ける社会保障費の財源として、消費税率引き上げは欠かせないという認識が広まっているようだ」としています。

しかし、はたしてそうでしょうか。この問題では、日本経団連が4月に消費税率の早期引き上げと法人税率の早期引き下げを打ち出し(「経団連成長戦略2010」)、6月には経済産業省が法人税の引き下げを打ち出しました(「産業構造ビジョン2010」)。財界の要求に政府と与野党が足並みをそろえたようです。

それにしても、不思議に思うのは、国の予算に責任ある閣僚から、消費税増税の話は出ても、消費税を増税していくら税収を増やし、法人税を下げていくら税収を減らし、収支はこうなるというビジョンが出ていないことです。ただ、やみくもに増税を言っているだけです。

消費税増税論者は、日本の法人税が外国に比べて高いから企業が海外に移転するといいますが、企業が生産拠点を移転する理由は、本誌6月号の清家裕論文によると、第1は労働コスト84.7%、第2は海外市場の将来性65.1%であり、法人税が高いからではありません。

また、税と社会保険料を合わせた企業の公的負担が必ずしも高くないことは、「経団連成長戦略2010」でも認めているところです(表参照)。

財源問題でも、歴代政権は、大企業・大資産家優遇税制の是正、軍事費の大幅削減、むだな大型公共工事の削減には手をつけていません。
消費税を増税しても、法人税を減税すれば、消費税は法人税減税の穴埋めに使われてしまいます。それは消費税導入からの20年間で証明されています。

消費税を増税し、法人税を減税してほしいのは、大企業だけでしょう。消費税を身銭を切っても払いきれない中小企業、中小業者は誰一人として望まないでしょう。「歴史上、増税だけで財政再建した国はありません」と経済評論家・勝間和代氏のブレーン上念司さんは言います。「税収を増やすには名目GDP を増やせばよく、そのためにはデフレから脱却すればよいのです。逆に、デフレの状況で税率を上げるとさらにモノが売れなくなり、名目GDP はしぼんでしまいます。97年の消費税率を3%から5%に上げたときがその例です」と指摘しています(「全国商工新聞」6月14日)。

平成20年分で消費税の新規滞納件数は20%を超えます。もし、消費税が10%、20%になったら、消費税を納められない事業者は急増しましょう。他人ごとではなくなります。消費税納税義務者である中小企業と中小業者、そして、消費税を負担させられている国民が今こそ声を上げるときではないでしょうか。

全商連が6月11日に都内商店街でおこなった消費税に関するアンケートで、「これ以上税率が上がったら商売が続けられない」と53.8%の事業者が増税に反対の声をあげています(「全国商工新聞」6月21日)。

大企業の数はほんのわずかです。消費税納税に苦しむ中小企業と中小業者、生活に苦しむ国民は数百万人、数千万人です。消費税増税・法人税減税のからくりを明らかにし、世論を変えましょう。
大きな運動を展開し、これ以上の増税をさせないようにしたいものです。そのためには、広範な業者団体や商店会などとの共闘も必要になりましょう。

本稿が「新報」に載る7月初めは参議院選挙のさなかでしょう。上念司さんは、「参議院選挙では、『消費税を20%にする』などと主張する政党には間違っても投票してはいけません。雇用の安定に寄与し、日本経済の最前線で奮闘している中小企業のオーナーたちが、声をあげる時だと思います」と述べています。

NHK テレビで放映されましたが、6月11日に日比谷野外音楽堂で「建設職人怒りの母ちゃん集会」が開かれました。数十人の千葉土建主婦の会の人たちは、「不況のなか、低単価・低賃金で働かされ、食べるのがやっと。パートに出る主婦が増えている」「がまんは限界、消費税を下げろ」と訴えたそうです。
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運動ははじまっています。中小企業、中小業者の生活と営業をまもるためにがんばる新人会がこの運動の先頭にたつことが求められているのではないでしょうか。

(あいだ ひでお:東京会)


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