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時潮

税理士の未来のために
・・・税理士法第1条の改正を!・・・
税経新人会全国協議会  理事長  清家  裕  

新年おめでとうございます。新政権が船出して3カ月余がたちましたが、この政権がどこに向かっているのか判然としません。この政権に憲法9条、憲法25条などを基本に据えた政治を実行してもらうためには、私たちが税制・税務行政・税理士制度について、今まで以上に積極的に意見を出していかなければならないことがわかってきました。この観点から新人会活動を旺盛にやり、新人会の「出番の時」を実践したいと思います。「みんなで一緒に考え、みんなで一緒に行動する」、みなさん今年もよろしくお願いいたします。
1.「受託事業」で進む下請化

昨年、日税連は「税務支援の実施の基準に関する規則」等を変更して、国税当局が実施する事務のアウトソーシング(外部委託)を「受託事業」と称して税務支援に混入しました。そして、各税理士会はこの変更に伴って税務支援の規則等を変更し、「受託事業」の一部は全会員の従事が義務付けられました。「受託事業」は下請事業であり、税理士は税務支援の名のもとに国税当局の下請事業に従事することを義務付けられたのです。

下請けである「受託事業」を税務支援で行うことは、国税当局のための税務支援であり、納税者のための税理士制度から考えて疑念があります。税理士法第1条(以下、第1条)に規定する「税理士の独立した公正な立場」に抵触するのではないかとの疑念に、日税連制度部は「独立した公正な立場」とは、「一つは税務当局に対しての独立対等な立場を意味し、又一つは納税者への従属した権利擁護でもない立場をいうものである。すなわち、「独立した公正な立場」とは、委嘱を受けた納税者の援助に当たり納税義務者又は税務当局のいずれの利害にも偏することなく、自らの独立した公正な判断に従うべきであるという税理士の立場を示したものである。」として、第1条に抵触しないとの見解を示しています。また、国税庁も同様の見解をとっています。

現在の第1条の規定では、国税当局による税理士の下請化を許す弱点を持っているといわなければなりません。
2.「書面添付」で進む補助者化

昨年、日税連と国税庁は低迷している「書面添付」の添付率の向上と記載内容を「良好」にするために、日税連は「添付書面作成基準(指針)」(以下、「指針」)を定め、国税庁は「調査省略通知」を文書でおこなうこととしました。「指針」によれば、書面添付制度の趣旨は「税務の専門家である税理士の権利として、申告書を作成する過程で計算し、整理し、相談に応じた事項を明らかにすることにより、税理士法第1条の理念を実現するものである。また、税務当局もこれを尊重することで、税務行政の効率化・円滑化・簡素化を図るとともに、このことを通じ、税理士の社会的地位の向上に資することが期待される。」として、「書面添付」を推進しようとしています。ここでも第1条の理念、即ち「独立した公正な立場」が推進の根拠になっています。

「書面添付」は「調査省略通知」を餌に、税理士に税務調査をやらせようとするものです。書面の記載内容及び意見聴取の内容によって、税務職員が税務調査をおこなったと同等のレベルでなければ調査省略にはならないはずです。税理士が「書面添付」することは、税理士が税務職員に成り替って、納税者を税務調査することと考えなければなりません。税理士があたかも税務職員となる「書面添付」の根拠とされている第1条の「独立した公正な立場」は、納税者の権利を擁護する代理人制度とは相容れない結果を招きます。
3.税理士法第1条の改正を!

今、日税連は税理士法の「改正」に動き出しています。 「税理士法改正に関するプロジェクトチームによるタタキ台」では、税務援助の従事義務化、税理士証票更新制度の創設、書面添付制度・意見聴取制度の見直しなどを提案しています。これらの提案には、下請化・補助者化を法「改正」で一層進める意図を感じます。現行の第1条を拠り所に進められている国税当局への下請化・補助者化をストップさせるためには、第1条の改正が必要です。税理士制度は強大は課税当局に相対する弱き納税者のために、納税者の権利を擁護する代理人制度でなければなりません。税理士は課税当局と対等平等の立場でなければならないのです。ここにこそ、税理士の役割があります。

税理士の未来のために、日税連が1972年に定め実現を目指した「税理士法改正に関する基本要綱」(以下、「基本要綱」)を、今38年の時を経て実現させなければならないのです。「基本要綱」第1税理士使命には、「(1)税理士は、納税者の権利を擁護し、法律に定められた納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。(2)税理士は、前項の使命にもとづき、誠実にその職務を行い、納税者の信頼にこたえるとともに、租税制度の改善に努力しなければならない。」と書かれています。

この方向での第1条改正を対置して、税理士法改正問題に取り組んでいきたいと考えています。この機会に税理士の未来を大いに論議しようではありませんか。
(参考)現行税理士法第1条(税理士の使命)「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」

(せいけ・ひろし:大阪会)


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