衆議院選挙は、民主党308議席、自民党119議席という結果で民主党の圧勝のうちに終了した。有権者が抱える現状への不満そして将来に対する不安を解消して欲しいという願いが、賞味期限がとっくに切れていたのに政権与党であり続けた自民党ではなく民主党に託されたということなのだろう。
これで自民党が支配してきた戦後日本政治から脱却し、本格的な二大政党制に移行することになるなら、日本社会にとって大きな前進といえるだろう。しかし、政権与党となった民主党にも茨の道が待っている。というのは、今の民主党には政権運営の経験がある人材が極めて少ないことであるが、政権担当能力が備わるまで国民は待っていられない。すぐにでも実感できる結果を欲している。景気回復、雇用の安定・増加ということについては特に関心が高いのではないかと思われる。
景気回復に対して、今までの自民党の政策は企業や業界を支援、刺激して景気を押し上げるという手法をとってきたが、民主党の「マニフェスト」に書かれている「日本経済の成長戦略」は「子ども手当、高校無償化、高速道路無料化、暫定税率廃止などの政策により、家計の可処分所得を増加し、消費を拡大します。それによって日本の経済を内需主導型へ転換し、安定した経済成長を実現します。」となっている。要約すれば「手当など個人(家計)への給付→消費拡大→内需転換→経済成長」となる。これは公共事業や規制緩和、企業減税などを中心に、まず企業や業界を浮揚、その勢いで個人(家計)に給与所得の増加をもたらし消費を拡大して経済成長につなげるという自民党のやり方とは逆の方法が民主党のやり方であり、個人(家計)の側から景気を押し上げるやり方である。いわゆる「バラまき政策」と言われているやり方であるが、賛否両論ありその効果はその捉え方により評価が分かれるところであろう。
次に雇用問題であるが、最近1年間で「失われた10年」に相当するほどの雇用が失われた。完全失業率は6月の速報値で5.4%。これから1〜 2年で7%台に上がる可能性がある。一つの大きな理由は新卒採用がこれから大きく落ち込む可能性があるからだ。
大学も、専門学校も、高校も新卒の採用が大きく落ち込み、若年層の失業が増加する見込みである。民主党のマニフェストには「派遣社員」に対する記述はあるが、雇用を創出するという観点からの記述は無い。確かに「派遣社員」は増加しており、景気が上向くと、その数も増加するであろうからその人達のために法整備を進め、安定を図るのも大切であるが並行して公的部門が仕事を創出することも重要である。民主党には経済の立て直しは勿論のこと、バケツの底が抜けたような雇用喪失状態にいかに迅速に手を打てるかが問われている。
他にも課題は山積しているが、もし、民主党が来年の7月に行われる参議院選挙までに独自色を出せなければ国民の失望を買い、参議院選挙の結果、攻守を変えた衆参のねじれ現象ということが現実になりかねない。とりあえず、100日以内(年内)に何らかの成果を出してほしいものである。
そして、野党となった自民党に必要なことは「休息」ではないか。二大政党制が政界の健全な姿であるとするならば、今の自民党は再び政権を掌握するための十分な栄養を吸収し、政党を近代化させ、そして民主党の政策運営を厳しく監視することであろう。現在、日本が直面している困難は非常に厳しいものがある。まずは自らの現状を点検し、権力を抱擁して厳しい現実を直視する民主党と、党内改革を進めて刷新した自民党が競い合うことこそが、あるべき日本政治の姿であろう。 |