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時潮

政権「交代」と税制
税経新人会全国協議会  事務局長  佐伯  正隆  

解散総選挙が目前に迫ってきた。7月12日に実施された都議選と同じような結果が世論調査から予想され、政権「交代」の可能性が高いと思われるが政治は変わるのだろうか。

都議選の結果、都政がどう変わるのか。都議会民主党のマニフェストを改めて見ると、その第一が「新銀行東京の存続NO!」、第二は「築地市場の移転にNO!」第三「救急搬送時間30 分」である。他に「後期高齢者医療制度は廃止。」「中小企業融資を1.75兆円から3兆円に拡大します。」「2万人の保育サービスを供給し、待機児童ゼロを目指します。」などが目に付きます。

いずれも実現が望まれる政策ですが、可能なのだろうか。選挙結果からすると、都議会民主党が提案すれば、自民・公明以外の議員は賛成すると思われる。しかし、行政の長が議会とは別個に独立して選任される地方自治体では難しい問題があるうえ、「新銀行に都が1千億円を出す議案に賛成し、設立への道を開いた(朝日新聞)」ことなど、都知事と都議会民主党のかつての親密さを考慮すると、両者が全面的に対立することは想像し難い。今後の都議会に注目したい。

一方、国政では議院内閣制が採用されており、政権が交代すればマニフェストは実行可能となる。税理士として、まず思いつくのは「納税者権利憲章」「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入」の問題がある。

いずれも民主党は税制改正大綱などで、「制定する」「廃止する」としている。
ただ、権利憲章については税務行政を「憲法が保障する法秩序に合致させる」という観点は見当たらない。

特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入についても、廃止するとしながらも、給与所得控除全般の見直しの中で、改めてそのあり方を検討するとしている。2000年7月の税制調査会の中期答申を思い出します。同答申は382ページにもわたる分厚いものだが、この10年近くの庶民大増税を推進する役割を果たしてきたのではないでしょうか。

老年者控除などの人的控除の見直し、公的年金に係る税制の見直し、免税点の引下げなど消費税の改悪などとともに、給与所得控除の引下げを示唆している。同答申では「給与所得者の必要経費ではないかと言われるものを広めに拾い出してみると、その金額は平均で年間50万円程度になり、年間収入(674万円)の1割弱程度という試算が得られます。これに対して、給与収入に応じた給与所得控除額は給与収入500万円の場合154万円」などと、その大幅引き下げを示唆している。この「中期答申」が実施されるとなれば、間違いなく庶民大増税が襲い掛かってくる。

さらに、重大なことは消費税の問題である。消費税について、「わが国の基幹税である」「年金、医療、介護など国民に確実に還元することになる社会保障以外に充てないことを法律上も会計上も明確にする」とし、引上げ幅などを明らかにして、その次の総選挙で国民の審判を受け具体化するとしている。

「子供手当て」「高校教育の無償化」「高速道路無料化」「中学生までの医療費無料化」などの財源が消費税では「生活第一」は実現できない。

この総選挙で自公政権は退場するであろうが、民主党内にある消費税増税や憲法改悪の危険な動きを封じ込めるためにも、その他の現野党勢力の前進も必要ではないだろうか。


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