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時潮

景気対策と消費税
税経新人会全国協議会  組織部長  相田  英男  

米国の金融危機に端を発した世界同時不況から7ヶ月余、麻生政権は「景気対策」を連打していますが、景気は悪化する一方です。3月の完全失業率は4.8%と前月比0.4ポイント上昇。失業者数は前年より67万人増え、増加幅としては過去最高に並ぶ高水準、完全失業者数は335 万人となりました(「日経」5月1日)。

また、全国の主要企業を対象とした景気アンケートでは「景気が悪化している」が65%超となり(「東京」4月28日)、中小業者への調査では、売上減少76%、利益の減少80%と、中小業者はさらに深刻です(全国商工団体連合会3月の調査、全商連HP)。

政府が4月27日、国会に提出した、総額13兆9,256億円の新たな「経済対策」に伴う補正予算案も期待ができません。金融対策では中小企業とともに中堅・大企業の資金繰りを支援。「低炭素革命」として、「エコカー」への買い替え促進や「省エネ家電」の販売促進など、自動車・電機業界が求めていた施策が盛り込まれ、また、住宅取得のための贈与税軽減や、大企業に有利な研究開発減税の拡充など650億円程度の減税を見込んでいます。

しかし、これらの目玉の経済対策で恩恵を受けるのは、大企業と一部の富裕層です。これでは景気はよくなりません。

昨年末、派遣切りされた青年が3日間も食事をしてなく、食事ができたら涙が出るほどうれしいとテレビで放映されました。筆者は、この青年をわが子と重ねあわせ、強い衝撃をうけ、地域の仲間に呼びかけて救援募金活動をおこない、年越し派遣村に送金したものです。

しかし、これは一時しのぎです。製造業の派遣を禁止するとか、雇用保険をもっと長く受給できるようにするとか、今の予算で政府がやるべきことはたくさんあります。

日本では、土地が投機の商品となり、庶民が安い家賃で住めなくなったことがホームレスを生み、経済を悪化させていると筆者は考えています。例えば、月1万円か2万円の家賃で住める公営住宅や民間アパートがたくさんあれば、月10万円の収入でも十分に生活ができます。2万円の家賃を払った残りの8万円が消費にまわり、経済は別の形で活性化するのではないでしょうか。

5月6日のNHKテレビで、ある自治体が、月額2万円ですむ家賃補助をして、若者世帯がこれなら子供を生めるという施策を紹介していました。いま、政府に求められるのはこのような政策ではないでしょうか。

新人会は、昨年12月18日に、中小企業庁に対し、景気刺激策として、消費税の税率を引き下げるよう関係機関に働きかけることなどの「景気対策緊急要望書」を提出しました。

この提案のきっかけの一つは、英国が景気対策として、消費税(付加価値税)の税率を2.5%減税したことです。

英国の調査機関・経済ビジネス・リサーチセンター(CEBR)が発表した最新の調査で、付加価値税の減税に消費を拡大する効果があったと指摘しました。消費税の減税により、国内の小売売上高はこれまでに21 億ポンド(3,108億円、引用者)拡大し、年末までの13カ月間で、減税による消費拡大効果は80億〜90億ポンド(1兆1,840億〜1兆3,320億円、同)に上るとみられる(「NNA.EU」4月30日)とのことです。消費税の減税が景気拡大に効果があった例として注目されます。

麻生政権は、消費税率引き上げ方針を2009 年度税制「改正」関連法案の付則に盛り込み、成立させました。

しかし、いったい、麻生政権に消費税増税を決める資格があるのでしょうか。 現在、衆院で、自民党が議席の過半数を占めているのは、4年前のいわゆる郵政選挙によるものです。「しかし、この圧勝で小泉政治のすべてが信認されたと考えるのは間違いだ。なぜなら、白紙一任でお任せというわけにはいかない」(「朝日」05年9月12日)のです。

したがって、この議席を引き継いだ現在の麻生政権に消費税増税を決める資格はありません。国民の審判なしに増税のレールを敷いたことは、だまし討ちであり、民主主義に反するものです。

世論調査では、消費税増税には60%以上が反対しています。消費税の増税を阻止するには、今度の総選挙で、消費税増税を争点として、国民の審判をあおぎ、消費税増税反対の声を国会で多数にしていかなければなりません。

消費税を売上げに転嫁できず、身銭を切って納めざるを得ない中小企業にとって、これ以上の消費税増税はまさに死活問題です。中小企業の営業と生活をまもる税理士として、中小企業と力をあわせて消費税の増税を阻止するためにがんばらなければならないと考えています。

(あいだ・ひでお:東京会)


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