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時潮

時代をみつめ、時代をつかみ、行動にうつそう
税経新人会全国協議会理事長  平石  共子  

2008年9月15日リーマンブラザーズの破綻を境に堰を切ったように世界中が一変した。その前年7月にサブプライムローン問題が表面化したとき、バブル崩壊により国民を苦しめた住宅ローン問題が思い起こされたが、詐欺同様の手口により低所得者層が狙われたというのが実態のようだ。(『ルポ貧困大国アメリカ』堤未果著)

サブプライムローンを押し付けた金融機関は、クレジットカードも使えない、銀行口座も持っていない低所得の移民情報をつかんで、ピンポイントで勧誘に回ったという。アメリカで中流家庭の消費率が飽和状態になった時、次のターゲットとして低所得者層を狙ったシステムがサブプライムローンだった。しかし、これにはまだ先があって証券化し、世界中にばら撒かれた。これが金融の自由化が招いた種であることに異論はないだろう。いうまでもないがサブプライムローンは契機とはなったが、金融自由化の象徴的な出来事の一つにすぎない。金融危機についてはなぜ起きたのか、どのようなメカニズムなのか、しっかりと解き明かす必要がある。

しかし、問題なのは、この仕組みが一番弱い人たちを犠牲にして成り立ってい ることである。非人道的な行為が堂々と行われたのである。

日本では国を挙げて「貯蓄から投資へ」と国民を誘導し、超低金利のもと株式や投資信託に貯蓄が回ったことにより、なけなしの個人資産が半減した人も少なくない。もっと深刻なのは、一番しわ寄せを受けている非正規雇用者に対して、真っ先に手がつけられたことだ。トヨタを皮切りに日本の名だたる大企業が期間社員、派遣社員の大幅な削減計画を発表した。

昨年、小林多喜二の「蟹工船」がー多喜二没後75周年を機に空前のブームとなった。世界恐慌が起きた1929年に刊行されたというのも、あまりにも今の世界状況と酷似しているのに驚く。現代において蟹工船ほどの劣悪な労働状況があるのかと疑問を呈する人がいるが、高度に進んだ消費社会において、年収200万円以下のワーキングプアと呼ばれる貧困層が1,000万人以上存在すること自体、経済的にも精神的にも如何にひどい状況に置かれている人が多いかを示しているではないか。大企業はもはや社会的な責任を放棄している。

私たちが関わっている中小零細企業は、今回の世界的な金融危機に何も関係していないにもかかわらず、金融機関の「貸し渋り」「貸しはがし」にあっている。それでなくても、売上の落ち込みがひどい。もっと、"今の日本おかしい"と声に出して言わなければと思う。

昨年11月4日、アメリカ大統領選挙は、劇的な結末を迎えた。アメリカ国民は、黒人初の大統領オバマ氏を選択した。まさに「チェンジ」を望んだのだ。
イギリスは、消費税の税率を12月から向こう1年間、17.5%を15%に引き下げるという政策を実行した。約1.8兆円規模の減税だという。

私たちは、日本でも消費税1%、2.5兆円規模の減税を提言していくべきではないかと思う。イギリスのブラウン首相は「異例な時だからこそ、異例な行動が必要」といったそうである。しかも、その財源は高額所得者の所得税率の引上げで捻出するという。私たちがあるべき税制改正として提言してきた内容と変わらないではないか。アメリカとイギリス、新自由主義の双璧の国が、変わっているのに、日本は一体どうするのだと詰め寄りたい。

もっと自由な発想で、今何をするべきなのか、選択するかが問われている。日本の国も、国民も、そして、新人会の活動も。

このような状況の中で新人会の果たす役割は大きいと思う。また、全国の会員がそれぞれの場で顧問先や地元の諸団体に対し力を発揮し、勇気付け、支援していくことが求められる。そのための学習を活発にしよう。
9月の第45回佐渡全国研には、全国から各地の活動を報告するために結集しよう。
新しい年、2009年は、金融危機や世界同時不況に萎縮することなく、活発に行動することを誓う。

(ひらいし・きょうこ)


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