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時潮

税理士は生き残れるのか
税経新人会全国協議会副理事長  山本  友晴  

だいぶ以前になるが、ある弁護士と飲みながら議論したことがある。社会体制が、例えば社会主義体制となったとき、税理士制度はなくなってしまうのではないのか、公認会計士制度はますます必要となり存続するのではと・・・。

結論は、国家がある限り、支配側と被支配側があり、その被支配側の権利が侵害される要素があり、必然的にその権利擁護が必要である。と言うことは専門家である弁護士と税理士は社会体制が変化しても存続するとの事であった。公認会計士制度はなくなるかも知れないとも・・・。

税経新人会ではこの秋、『税理士・税理士会は如何にあるべきか2011年税理士法「改正」を考えるー』とのテーマでシンポジュームを開いた。とても示唆に富んだ内容のシンポジュームだった。日税連や当局に節度ある説得力ある提案が必要な事も分かった。

私たちは、中小企業家、一般の納税者の真の味方としての役割を持っている。

現実、税務運営について、納税者の権利擁護どころか税務調査においてはいかに徴税を増やすかに重点が置かれており、その結果、反面調査はやり放題であり、税務運営方針(昭和51年4月1日制定)も全部の税務職員には周知徹底されていないようである。このことは、私の税務調査体験で明らかになったのだが、反面調査について議論した際、反面調査の整合性については、税務運営方針に明記されていると言ったところ、3人の上席調査官(40代と30代後半)が全員その税務運営方針の存在を知らなかったのである。これにはとても驚いた。彼らは税務運営方針など眼中にないのである。運営方針の意義について、弁護士に聞いたところ、行政関係者は、守るべきものであるとの返事が返ってきた。

税制についてもここ数年、消費税に焦点が絞られ、所得税、法人税もその民主的な内容が壊されてきている。消費税は3年後には税率を引き上げるとの政府筋からのメッセージが出されてきており民主的で公平な課税が遠のいているのを感じざるを得ない。相続税も50年ぶりの「改正」として課税方式が、遺産課税方式から遺産取得課税方式へと大転換されることが予定されている。まさに相続税においても庶民増税の登場であると言える。

私たちは税の専門家として、現在のこのような状況にしっかりものを申すことが求められている。そのためには、現状を的確に把握することと税制についても学習を強める必要がある。

現状を踏まえてもの申す事が、将来の税理士制度へと、納税者が真に認めてくれる税理士制度の構築へと、つながるのではと思う。

税理士制度は未来永劫とは言わないが、国家がある限りなくなることはないのである。税理士は生き残れると言い切れる。ただし、税理士としての役割をしっかりと身につけて行動することが最低限必要である。

(やまもと・ともはる)


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