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時潮

税務支援に従事しない者は登録抹消か
・・・近畿税理士会制度部「税理士法改正に関するタタキ台」・・・
税経新人会全国協議会副理事長  清家  裕  

日本税理士会連合会(以下、日税連)は2011年に税理士法を「改正」することを目指し、「改正」項目の検討を進めている。そして、池田日税連会長は日税連制度部長に「税理士法改正要望事項」(タタキ台)について、来年3月31日までに答申するよう諮問した。このような状況の中で、近畿税理士会制度部が「来るべき税理士法改正に向けて、(中略)税理士制度が、将来にわたって国民から信頼される制度として更なる発展を遂げることを目的に検討を行い、タタキ台として取り纏まとめた。」として、その検討結果が会報「近畿税理士界」に「税理士法改正に関するタタキ台」と題して、3回(6,7,8月)に分けて発表された。

この「タタキ台」を読んで目が釘付けになったのが、「III. 税理士の社会的責務の明確化」である。「税理士の社会的責務の明確化」とは税務支援の従事義務化であり、次の4点を提案している。

(1)税理士に対する税務支援への従事義務
新たに、税理士会が実施する、委嘱者の経済的理由により無償又は著しく低い報酬で行う税務支援(税務援助)への従事義務を、税理士法に規定する。
また、税理士会が指導を必要と認めた納税者に対する税務支援(税務指導)については、現行どおり、税理士会会則において従事義務を規定する。

(2)従事免除
従事免除は、傷病等により従事することが困難な者に限り、適用するものとする。
また、従事免除の基準を明確に規定し、例外規定として、厳格に適用するものとする。

(3)懲戒処分
税務支援の従事義務を怠った者に対しては、税理士法上の一般の懲戒(法46条)又は税理士会会則による懲戒処分を適用する。

(4)登録更新との関係
税理士登録の更新制度において、登録有効期間内に税務支援の従事義務が達成されていない者については、更新を留保し、1年以内に従事不足相当分の税務支援従事により更新されるものとする。

税務支援とは税務援助と税務指導を指し、税務指導には課税当局のアウトソーシング(外部委託)が含まれる。このアウトソーシングは1記帳指導、2年金相談、3確定申告無料相談、4確申期電話相談の4事業である。従来、税務援助、税務指導は課税当局主導で行われ、事実上税理士会・税理士が課税当局の下請でやってきた。アウトソーシングは正に下請である。

課税当局の下請でやる税務支援への従事を、税理士法に税理士の従事義務を規定し、従事免除の要件を厳格化し、懲戒処分の適用から、果ては税理士登録の更新要件にして強制しようとするのが、この「税理士の社会的責務の明確化」である。特に問題なのが、税理士法46 条の懲戒処分の適用と登録更新の要件にしようとしていることである。46条は財務大臣による処分で、処分内容は税理士業務の禁止まで行える。また、税理士登録の更新制度を新たに導入し、税務支援への従事をその更新要件にしていることである。これでは税務支援に従事しない税理士は税理士登録が抹消され、税理士業務ができなくなる。このような税理士への税務支援従事の強制は、日本国憲法第18条(奴隷的拘束および苦役からの自由)を侵す暴論である。

税務支援は課税当局の下請で行うのではなく、税理士会独自の事業として行わなければならない。税務支援への従事は会員への説得と自発的協力の下、任意で行うべきである。国民のための税理士制度、納税者のための税理士制度を守り発展させていくために、税務支援と従事義務化は根本的に見直さなければならない。見直しこそ、「将来にわたって国民から信頼される制度として更なる発展を遂げる」道筋である。

(せいけ・ひろし)


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