このアウトソーシングの背景には、この間応能負担原則に反する「広く薄く課税する」庶民大増税の税制改悪により増大した納税者対策であることを忘れてはならない。
2005(平成17)年度より公的年金控除が引き下げられるとともに老年者控除が廃止され高齢者の確定申告者数が急増した。また、消費税の免税点が3,000万円から1,000万円に引き下げられることにより、個人事業者120万人、法人40万社の納税義務者が増加した。
国税庁は、その対策として2003(平成15)年に従来の「調査・指導・相談・広報」の業務執行体制から調査・徴収中心の体制に大きく転換し、事務の合理化・効率化を積極的に進め、内部事務の一元化に着手し、指導・相談業務はアウトソーシングする方針をとってきている。
大きな政府から小さな政府を標榜する新自由主義の政策に対して、課税ベースを広げ税率をフラット化させる税制改悪は、税務行政事務の増大を招くという内部矛盾を引き起こしている。この事務の一部を税理士が下請けとなり支えることは、ひいては現行行政に加担する結果となり、到底受け入れることはできない。
事務量の増加への対応策をアウトソーシングに求めるのではなく、そもそもの原因である税制を抜本的に見直し、課税最低限の引き上げを行い憲法の要請する応能負担原則にもとづく税制への大改革が必要不可欠である。 |