ガソリン税の暫定税率を元に戻す改正租税特別措置法などが4月30日の衆院本会議で、出席議員の三分の二以上の賛成多数で再可決、成立しました。5月1日出荷分から1Lあたり約25円の暫定税率が1ヶ月ぶりに復活し、国民生活を直撃しました。
福田首相は再可決した30日夜に記者会見し、暫定税率復活に理解を求める一方、「政府税調でも環境税の問題とかいろいろありますので、いろいろその準備をしていただく、そういう作業に入っていただく」と述べ、環境税導入に言及しました。
今年は、1997年の京都議定書で国際社会が決めた温室効果ガス削減目標達成のための第一約束期間(2008-2012年)の初年です。また、7月には北海道洞爺湖サミットが開催されます。サミットでの主要テーマは「環境・気候変動」で、議長国である日本は、地球環境問題でイニシアティブを発揮し、特に2013年以降の次期枠組みに関する国連での議論を後押しする役割をになっています。
それにもかかわらず、日本の温暖化対策のとりくみは大きく遅れています。この100年間の平均気温の変化とCO2削減達成状況をみるとその遅れは深刻です。平均気温が日本では1.06℃、東京では3.00℃と、世界の他の都市より上昇し、CO2削減達成状況では、イギリスー18.7%、ドイツー15.7%とそれぞれ大幅に削減させているなかで、日本では+6.4%、東京+7.1%と逆にCO2を増やしているのです。
日本のとりくみの遅れの大きな原因は、政府や財界が温暖化対策に前向きでないことにあります。とりくみの遅れを意識してか、福田首相は、「現状のままでは、削減目標達成は極めて厳しい状況にある。我が国の足元を固めなければ、サミットで説得ある主張はできない」と述べ、追加的な対策を早急にまとめるように指示した(2007年10月18日、地球温暖化対策関係閣僚会議)といわれています。
温暖化対策として、例えば、レジ袋や割り箸を使わないとか、冷房の設定温度を上げるなど、国民一人ひとりの努力ももちろん大事ですが、全体の目標を達成するうえでは、電力、鉄鋼など大量排出元の大企業・財界がきちんとやることが一番のカギでしょう。
対策のひとつに環境税があります。環境税導入について、これまで、民主、共産、社民の野党は政策としてかかげていましたが、自民、公明の与党は消極的でした。しかし、福田首相の環境税導入発言で、環境税導入が現実味を帯びてきた感がします。
2002年の全国研究集会では、「地球温暖化と環境税」のテーマで、東京会が先駆的で詳細な研究報告をおこなっています。最近では、日本共産党の欧州温暖化対策調査団が4月に発表した「欧州にみる温暖化防止の促進策」があります。最新情報として、次に、一部引用します。 |
|
「環境悪化が放置されるのは、環境への悪影響はタダだとみなされているからで、環境を悪化させればカネがかかるようにして、経済活動に組み込めば、環境悪化は防ぐことができる。こういう考え方に基づいて、環境に悪影響を及ぼす行為に税金をかけるのが環境税だ。欧州では、フィンランド、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、デンマークなどで炭素税が導入されている。
英国では、「気候変動税」と呼ばれ、これは炭素税ではなく、工業、商業、農業、公共部門でのエネルギー使用に課税される。燃料代に10-15%が加算される。再生可能エネルギーは免税される。その税収は、国民保険料の雇用者側の負担を0.3%削減する形で産業側に還元される。ドイツでは、温室効果ガスを大幅に削減する重要な手段として「エコ税制改革」が実施された。その主な中身として、現行石油税の引き上げと電力税、道路使用料、廃棄物税が導入された。この税制改革に伴い、事業主・被保険者双方の社会保険料が引き下げられた。
この税制改革により二酸化炭素排出量が2.4%削減されたほか、03年までに25万人の雇用が創出された。エンジン燃料使用量は、99年から05 年までに17%減ったといわれている。」 |
|
このように、欧州各国での環境税は大きな成果をあげているようです。日本での環境税導入には、自動車や石油関連企業などの抵抗が予想されますが、環境税増収分で社会保険料等の負担を軽減する方式は受け入れられるかも知れません。同時に、社会保険料等の減収分をどうするのかの対策が必要となるでしょう。
温暖化対策は待ったなしの課題です。温暖化による干ばつやバイオエネルギー開発で食料不足が地球規模で深刻になっています。食物自給率39%の日本はとりわけ深刻です。新人会は、税の専門家集団として、環境税導入についても、あらためて、提言していくべきではないでしょうか。 |
(あいだ ひでお・東京会) |