時潮

アウトソーシングで何がどう変わるのか
税経新人会全国協議会・制度部長    斎藤  直樹  

昨年から全国協議会の制度部長をさせていただいています大阪会の斎藤です。主としてアウトソーシングについて問題を担当しています。本紙の1月号の表紙の次のページの青い折込で「全国の現場での税務支援とアウトソーシングの実態調査にご協力ください」というお願いをしたのも私斎藤です。

いままでの会合で「アウトソーシングで何が変わったのですか。そんなにいうほどの変化はないんじゃないですか」という質問をよく受けました。私は「いや全然違うんですよ。仕様書をみたらよく分かります。事業の主体が当局であるとはっきり書いています。そして事業の目的が税務職員の仕事の軽減にあると明記しているんですよ」とお答えするのですが、もうひとつよくはご理解いただけないようです。

その理由の一つはアウトソーシングにかけられる4つの事業の内最大の規模で行われている確定申告期の税務相談(地区相談)の実施は、平成21年春からということに延期されたからです。それと、電話相談のほうは従事した人の実人員が少ないので直接従事した人のお話を聞く機会が少ないということも原因です。そしてまた私が仕様書をみたらよくわかりますといっても税理士会の税対関係の役員でもしていない限りは手に入りにくいのです。

ただ、税経新人会の会員であれば誰でも入手できる重要資料があります。昨年11月の秋のシンポジウムで配布されたレジメの資料編の11ページからの「今後のアウトソーシングについての考え方(国税庁資料)」(平成19年4月6日)と14ページからの「日本税理士会連合会第1回税務支援対策部常任委員会議事録案(抜粋)」です。当局の本音がある程度出ていますし、例えば来年の地区相談がどういう運営になるかを考えるのに大いに参考になります。

(国税庁)税理士業務に関連した事業をアウトソーシングすることを決定した瞬間、これらの事業が(日税連、税理士会の)税務支援でないことを理解している。

(国税庁)無料税務相談は、一般競争入札方式となるところから(税務支援ではなくなり)全署で無料相談をする必要はなくなる。署の実情に応じた対応、例えば他の署との合同開催などもでてくることもある。

(国税庁)署に対しては、アウトソーシング、競争入札の本質(目的)を再認識してもらい、事業の効率化を計るとともに、最大の効率を得られるように指導する。

「税務署の仕事の効率化」これこそアウトソーシングの本質を言いあらわした言葉であると思います。これをもっと突っ込んだ言葉で言えば「安上がり」ということだと思います。 確申期の電話相談の税理士の日当は25,000円(大阪局)ですが、税務職員の人件費の平均を日当換算すると43,000円です。事業が順調に運営されるようになると25,000円はもっと下がるでしょう。「安上がり」が目的なのですから。それと効率化のためには税務署単位という枠もはずすといっています。

さて「アウトソーシングで何が変わったのですか。そんなにいうほどの変化はないんじゃないですか」という質問に戻ってみたいと思います。アウトソーシング方式はいままでとは大きな違いがあると強調してきましたが、逆にもっともっと大きな共通点があるのです。これまでのいわゆる三者協定による税務援助なり税務支援の目的は民商対策、そして平成16年からの消費税の免税点の引き下げと年金税制の改悪以後は税務行政の補完という役割も加わりました。そしてこんどのアウトソーシングの目的は税務行政の効率化、安上がり化です。両者の共通点は税理士がその中で主体性を発揮できていないことです。

税理士の主体性の問題、これが私たち税理士にとってのアウトソーシング問題の捉え方でなくてはならないと思うのです。

(さいとう  なおき・大阪会)


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