時潮

人間性とコンプライアンスと環境
税経新人会全国協議会  副理事長  山本  友晴  

三重県の老舗大手和菓子メーカー赤福が、店頭で売れ残った商品を回収し、冷凍保存し再出荷していたとのニュースが流れた。

私は、青春時代の15年間名古屋に住まいしたことがあるので、この赤福の赤福餅は伊勢参りの際などに購入したり、土産物としてもよく利用していたので、今回の報道には大きな関心を持って聞いた。

社長は当初の記者会見で、これ以外の法令逸脱はない旨を、発言していたが、一夜明けて今度は、返品回収した商品を再利用し、子会社へ販売したり、日付を改ざんしていたことなどが発覚した。社長は会見の中で、もったいないからこうしたとも発言している。

残品を焼却することは、二酸化炭素による地球温暖化問題が話題になっていることを考えると、なるほどと納得してしまいそうになる。心からそのように思っていたのであれば、記者会見でも自信を持って発言しても良いのではと思うのだが、事実はどうなのだろうか。食品問題で日本は、あまりにも神経質になっているのではないかとも思うのだが、独自の考えがあるのであれば、それを披瀝して欲しい。黙ってしまえば、利益追求の結果発生したのではないかとみんなが思ってしまう。

雪印から始まった日本の食品業界のコンプライアンス逸脱、大手企業のこの種の問題がいつまでも続いているのは、利益追求型のこの社会の病み具合を見ているようである。

企業も人間が参加し運営しているのである。人間性無視の企業経営は、一時は大きな利益を上げて社会的な評価を得ることとなるかも知れないが、やがてはその闇の部分が暴露され人々から評価されなくなってしまう。

まだ赤福が倒産しているわけではないが、この会社へ材料を納品している生産者などは赤福の営業停止により多大な影響を受けてしまうだろう。米や小豆の生産農家、働いている人々など、もし倒産ともなると生活への影響も大である事が危惧される。

企業は、経営理念、それも人間性をもっとも尊重する内容の理念を持って経営をすべきである。その理念の中には、人間が生きるための環境保全も入っていなければならない。

赤福は、返品されたものを基本的には焼却処分をしていたようであり、それがもったいないとの認識になったのではないかと思う。もったいのであればそれを同様の商品とするのではなく、飼料や肥料への二次利用が考えられなかったのか、それが考えられなかったのであれば企業経営者の責任が大いに問われることとなる。

コンプライアンスは法律で決められているからではなく、人間性を尊重した自らの規範として作るべきものである。

我が国の政治をみてみると、人間性が無視される形で進められている。社会福祉予算の大幅な削減や税制改悪で、老人や弱者が大きな影響を受け、その生活が脅かされている。加えて中小企業に対しては、役員報酬の原則経費不算入(届けた金額のみが損金算入される)オーナー企業課税などで、中小企業いじめの税制改悪が行われており、この面でも弱者いじめの政治が横行している。

大手企業の利益保護に走るのでなく、総合的な社会発展を考えた政治、中小企業の保護発展を指向した政治がのぞまれる。

人間が人間らしく生きることが出来る社会が理想的な社会である。そのためには、弱者を大切にすることが基本とならねばならない。

(やまもと・ともはる九州会)


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