テレビ、ラジオ、新聞等が国民の世論形成に決定的にというほどの力をもっている。特に憲法改正国民投票の運動期間が60日から180日と短いということになるとなおさらである。改憲を進める勢力の中で重きをなしているのは大企業である。大企業は多額の広告費を支出してこれらのメディアに強い影響力を持っている。こうした背景を念頭に国民投票法案を眺めてみよう。 |
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(i) |
国民投票法案では憲法改正案広報協議会を設け(自民法案11条)、憲法改正案及びその要旨、解説等並びに賛成意見及び反対意見を掲載した国民投票広報を作成する等の広報活動を行うことにしている(自民法案14条)。ところが協議会の構成を各会派の所属議員数の比率によることとしているので、憲法改正賛成の論拠ばかりが広報される恐れが強い。
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(ii) |
政党等はNHK及び民放の放送設備により、憲法改正案に対する意見を無料で放送することができるとある(自民法案107条1項)。ただし衆議院議員及び参議院議員の数を踏まえた時間数を提供しなければならないとある。ところが現在の衆参両院の改憲派と護憲派の割合は9対1である。改憲、護憲の両派に同じ時間、同じ新聞スペースを与えなければ公平な広報にはならない。
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(iii) |
国民投票法案に書いていないところに重要なことがある。それは財力にものをいわせた広告宣伝活動になんら制限を加えていない点である。自由法曹団の意見書では、フランスでは国民投票運動における商業宣伝が禁止されていることを紹介している。 |