時潮

教育基本法と国際感覚
税経新人会全国協議会副理事長山本友晴
安倍総理大臣が誕生して所信表明演説がなされた。中身が良く見えないとの評価が巷ではある。でも明確なのは集団的自衛権行使への前向きの検討と教育基本法の「改正」である。やがては憲法9条の改悪に行き着く事を予感させている。彼は「『美しい国、日本』を実現させるためには、次代を背負って立つ子供や若者の育成が不可欠です」と言っている。教育の目的は何だろうか。愛国心を国民に強制し、国策に従う人間づくりをする事ではけっしてない。

教育基本法は、国からの強制を排除し、自主的に学び自ら国のあり方を考える国民を育てる事にその意義がある。いわゆる人格の形成、完成を目指す事に大きな目的がある。

東京都の教育現場における国歌斉唱と国旗掲揚の強制は目に余るものがあり、現教育基本法に違反する事が明白であるので、東京地裁での違法判決となったのである。

学問の自由は、時の国家権力によって侵されてはならない。

安倍総理は靖国参拝問題でも自らの行為について意見表明をせずにいる。靖国神社が何を目的としているのかは遊就館に入ってみればよく解る。誰が見ても明治からの日本が起こした戦争を正当化し肯定するものであり、義務教育課程の生徒たちがそれに接した場合、日本の中国侵略、朝鮮侵略は正当なものだったと誤解してしまうのではないかと思う。  中国や韓国が参拝問題を取り上げて批判しているのは、侵略戦争への総括がないまま推移する事への懸念からである。

今夏スリランカへ旅する機会があった。そこで現地人から聞いた話、『サンフランシスコ条約の折、荒廃の東京を見たスリランカのジャワルデネ代表、後の大統領は釈尊の言葉「憎しみは憎しみによって消えず、愛によってのみ止む」を引用し、日本への賠償を放棄した』。

彼らはとても親日家で、この事をとても自慢に思っている。

日本の為政者はアジアにおけるそれぞれの国の実情と歴史を知るべきである。スリランカは日本から見ると発展途上国であり裕福な国とは言えない。しかし、彼らは老若男女、年の隔てなく、一緒に暮らし助け合い、人間としては豊かに暮らしている。

教育も義務教育では、教科書は国の財産であり貸与されている。よって大事に使用し、次の世代へ引き継ぐ事となっている。そのため自分の持ち物の本より大事に使用するそうである。物を大事にする事を義務教育課程から実地に学ぶのである。

教育基本法が作られた過程とその意義を考え、それを教育現場で実施する事が今必要である。
また近隣諸国の実情をより深くつかみ、それを広く知らせ、国際感覚を持つ人々を多くする事が今最も優先すべき事ではないかと思う。

(やまもと・ともはる:九州会)


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