論文

第42回埼玉全国研究集会・分科会報告【第4分科会】 >>第42回埼玉全国研究集会・目次へ
元税務調査官が語る税務調査
埼玉会宮本浩一

1 参加者
約70名

2 報告者
最近の税務調査の傾向…長沢晃(東京会)
税務調査を受ける納税者・税理士…清家裕(大阪会)
税務調査の経験から… 法人税…菅谷英雄・生澤壮介
所得税…赤塩正雄
資産税…内藤 弘
(以上埼玉会)

3 討議の概要
(1) 税務調査の改革の方向
  調査を中心とした税務署体制
  税制は「大衆課税強化」に大きく変わろうとしている。今後、納税者がますます増加していくことが避けられない情勢の下で、
  イ. 政府・国税庁は
・納税者番号制度の確立
・記帳義務の強化
・納税者の説明制度の確立
・電子申告の強化
・書面添付制度の強化
・税務行政のアウトソーシング化
  等々新たな制度の導入を行いつつ、
  ロ. 「税務署の役割」「税理士の役割」「納税者の役割」を改めて組み直し、税務調査の強化、調査を中心とした税務署体制の確立を目指している。
  将来の税務署機構
  多様化する調査手法
・総合調査 総合特官の下で−納税者の法人税・所得税・相続税などその納税者にかかるすべての税目を一括して調査
・広域調査 広域的に事業を展開している納税者に対して、その関連会社も含め数署から数十署が合同調査を展開する
・連携調査 法人部門や個人課税、資産課税部門が連携・共同で調査
・グループ調査 調査部門全員又は数部門が合同で調査
・組調査 調査担当者が2〜3人が組を作り調査
(2) 無予告現況・現物確認調査
一方「高額・悪質重点」の名の下に「無予告現況・現物確認調査」が横行している。これに対して例えば大阪総合会計事務所では、「納税者のための税務調査10ヵ条を掲示して納税者に喚起を呼びかけている。その10ヵ条を参考のため掲載すると(税経新報の新年号にもほぼ同様なものが記載されているが)…
  令状なしの税務調査(任意調査)は、納税者の承諾と協力が必要です。問答無用の調査は違法です。税理士が人権を守ります。〔万が一のために、ビデオ、カメラ、テープを用意しておきましょう。〕
  いきなり税務職員が来たら、はっきり断りましょう。そして、その場で税理士に連絡して下さい。〔身分証明書の提示を求め、所属と氏名を書きとめましょう。〕
  税務署からの電話には、あわてずに要件と氏名を聞き、すぐ税理士に連絡しましょう。〔調査の日時は、税理士と相談して、都合のいい日に決めましょう。〕
  なぜ調査に来たのか、その理由を確かめましょう。〔任意調査で調査理由の開示を求めるのは納税者の当然の権利です。〕
  税務署員の質問に曖昧な回答は誤解をまねきます。即答する必要はありません。〔不正確なことは、よく調べて回答し、主張すべきことは主張しましょう。〕
  金庫、引き出しなどを勝手に調べることはできません。店舗、倉庫への立ち入りも納税者の承諾なしにはできません。〔納税者の承諾のないこれらの行為は違法です。黙認せずに厳重に抗議しましょう。〕
  勝手に帳簿等を持ち帰ることはできません。コピーの求めに必ずしも応じる必要はありません。〔納税者が納得できないものは、はっきり断りましょう。〕
  呼び出し、お尋ね文書には法律上の強制力はありません。税理士に相談して下さい。〔応じるかどうかは納税者の判断にまかされています。〕
  取引先や銀行などへの反面調査は納税者の承諾が必要です。〔無断の反面調査があれば強く抗議しましょう。〕
  納得できない修正申告の強要は違法です。〔修正内容については、税理士と十分相談しましょう。〕
(3) 税務調査官は敵か
ここで議論になったことの一つは、のコピーの求めに応じる必要はないと点にあった。最も強硬な意見は「税務署には絶対に協力すべきではない」「税務当局にはコピーをとる権限がない」とするもので、一方「仮に当局にコピーを求める権限があるにしても、その前にコピーをとるべき根拠はきちんと問いただすべきだ」との意見もあった。

さらに「調査官は徴税権力の先兵なのだから敵である。徹底的に戦う以外にない」とする意見もあった。しかしこの「調査官はすべて敵」論には疑問も残った。

▲上に戻る