(1)源泉徴収制度は、現行の租税制度の中に深く浸透しており、国、支払者(徴収義務者)、受給者(税負担する納税義務者)の三者構造によって混乱やトラブルを引き起こし、制度面でひずみが現れているので、報告者から簡素化、合理化が必要であるという趣旨説明と源泉徴収制度の見直し案が提起されました。見直し案の具体的内容は、新報8・9合併号82頁に掲載されています。報告者がこのような見直し案を提起するのは、受給者が確定申告をすることによって、納税者として税痛感を味わい、税の使い道等に関心を高める機会になることを期待してのことであります。
(2)簡素化という視点から、利子・配当、給与、年金の所得に限定して源泉徴収を行うという範囲を限定するという提起です。また、受給者は全員確定申告を行うという見直し案の提起に対して、受給者全員が確定申告をすることに関して、参加者から次のような意見が出され、源泉徴収制度の問題点は認識されていますが、制度変更後のあり方にはまだ意見が分かれていることが認識できました。
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年末調整をせずに、受給者全員が確定申告を行うのは大変な作業であり、デメリットである。しかも、行政側も大変である。確定申告をしない層もかなりでるのではないか、という年末調整廃止、確定申告一本化に危惧する意見が発言者の中に多くありました。 |
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給与所得者に対して、特定支出控除を拡充する方策を検討したらどうか。年末調整による扶養親族控除の判定というプライバシーも理解できるので、年末調整と確定申告との選択適用を認めたらどうかという意見もありました。 |
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年末調整に対して、事業所の負担が大きい。納税義務者(納税者ではない)は痛みを知るべきである。したがって、納税者は確定申告すべきという意見もありました。
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公務災害が認定され、給与カット分が後日補てんされた際、一時金の支給があったとして多額の源泉徴収がなされた事例が紹介されました。平成16年に補てん額が800万円出たが、源泉税ほか500万円控除された。この800万円の確定時は平成15年12月であること、15年には他の所得700万円もあり、その年1500万円に対して源泉徴収された結果であること。事案の相談を受けた税理士が国税庁のホームページの類似質疑事例から判断して、給与支払日に従って5年間で計算すべきものとして再計算した結果、95万円の過大差額が出たこと。支払者に対して還付手続を申し出たが、支払者に解釈する権限がなく、当初源泉徴収の際、支払者が問い合わせた税務当局に直接尋ねた結果、権利確定主義に基づき、各年に計算することになり、94万余円還付されることになったそうです。しかし、この還付金には還付加算金がつかないことも明らかにされました。 |