論文

第42回埼玉全国研究集会・分科会報告【第2分科会】 >>第42回埼玉全国研究集会・目次へ
企業再生の手法
大阪会 井川博幸

I.はじめに
埼玉全国研分科会の発表内容を決定するに当り、昨年の10月7日に第1回目の打合せを行いました。第39回熊本全国研において今回と同じ発表チームにより、「倒産等に関する実務」をテーマにして、「破産」・「倒産」・「解散」・「清算」等の問題について発表を行ったことから、企業をなくす内容から、逆に企業を生かす内容にしてはどうかということで、「企業再生」をテーマとした発表内容になりました。

テーマは早く決まったのですが、一口に企業再生と言っても、いろいろな手法があり当初はあれもこれもという状況でした。

数回打合せを重ねるうち、中小企業でも比較的利用しやすい民事再生手続について、税務上の論点を中心に事例を交えながら、企業再生とはどのようなものか、そこに含まれている問題点は何かについて考察してみる事になりました。

II.企業再生の制度の変遷
従来から企業再生の現状においては、法的整理・私的整理の制度面の問題から早期に適切な再生が困難であり、手遅れになってから着手するのが多い実情でした。そこで、平成8年10月より倒産法制の全面的見直しがなされ、平成11年12月に和議法を廃止して、民事再生法が制定され、続いて、平成14年12月に会社更生法の全面改正、平成16年5月に破産法の全面改正があり、平成17年7月の会社法の公布により会社整理の廃止・特別清算の全面改正によって倒産法制の整備がなされ、法的整理は迅速化・合理化がなされ、従前と比較してかなり使いやすいものとなりました。

一方、私的整理においても、平成13年9月、全国銀行業協会と日本経団連により「私的整理ガイドライン」が策定され、手続きに公平性・公共性が確保されることになりました。他方、平成15年4月、産業再生機構法が成立、同年5月産業再生機構が業務を開始しました。また、平成15年4月に公布・施行された改正産業活力再生特別措置法に基づき、経済産業大臣が商工会議所等を設置主体として、各都道府県に1つ、都道府県の区域を管轄として中小企業再生支援協議会を設置し、中小企業の再生支援業務(事業再構築計画の立案)を行っています。

税制面においても、平成17年度の法人税改正において、大幅な改正が行われました。第1は民事再生手続きの場合にも資産評価益の益金算入が認められました。第2は期限切れ欠損金の損金算入について、資産の評価損益の計上を要件として、民事再生手続きの場合にも債務免除益等に対して期限切れ欠損金を青色欠損金に優先して控除できることとなりました。第3は私的整理の場合にも一般に公表された手続きに従って債務処理計画が進められる等明瞭かつ公平を有する私的整理の場合には、民事再生手続きと同様の取扱いが行われることになりました。

このように、法的整理・私的整理の制度面、及び税制面において改正が進み企業再生がより使いやすい制度となりました。

II.分科会での発表の骨子
具体的な内容が決まり、本格的な作業に取り掛かったのは6月からでした。8月4日には予行演習としてプレ発表を大阪会で行ってからも、一部内容を変更することになり、そこから1ケ月で最後の詰めを行い、本番を迎えることになりました。

分科会当日は、発表担当者が作成した当日資料(A4版54ページ)を配布し、発表を行いました。発表内容の詳細については、税経新報8・9月合併号に掲載されておりますので、ここでは骨子のみの報告とします。
1. 企業再生の手続
まず最初に大西正也会員が、企業再生手続のポイントについて、デューデリジェンス(適正評価:Due Diligence)の目的、ビジネス・法務・財務の3つのデューデリジェンスの内、税理士・会計士が具体的に関与するのは財務デューデリジェンスであり、これによって再生可能かどうか、再生するためには何が必要で、何を削らなければならないかを確定させる。その財務デューデリジェンスの結果を受けて、破産・清算配当率を算定する。次に、再生計画の策定と実行可能性の検討を行う。行う上でのポイントは、過剰債務の処理の決定、事業計画(収益予測)、資金計画の作成であり、特に赤字にならないように計画することが重要である。また、再建計画が実行可能かどうかの検討については再建計画を立てるに当たっての諸条件が合理的であるか、費用削減計画が実行可能であるかに留意し、特に利害関係者の調整が重要であること等の発表を行いました。
2. 企業再生スキーム
続いて大西会員が、企業再生スキームは再生会社を主体とした場合の区別として自力再生と第三者支援、制度上の観点から法的再生と私的再生に分けられる。法的再生には民事再生法と会社更生法があり、それぞれの内容・特徴点・メリット・デメリットについての発表を行いました。
3. 私的再生(自力再生)の事例
次に楠薫会員が、実際に経験した自力再生(任意整理による再生)の事例紹介を行いました。具体的な内容についてはここではご紹介できませんが、債務超過である会社をどのような方法で清算まで持っていったのか。その過程で銀行からサービサー(債権回収会社:Servicer)へ売却された債務に関して、サービサーとの生の交渉経過の紹介、建物賃貸借契約解除等に伴う立退料の消費税課非判定、債務免除益を計上するタイミング、所得税法64条2項適用の可否、法人に対する求償権の行使の可否、連帯保証人がある場合の各連帯保証人間内部の保証債務の負担割合の問題等の発表を行いました。
4. 企業組織再編による企業再生
休憩後、長谷井雅子会員が、企業再生を目的とした企業再編は様々なバリエーションがあるが、基本的には事業の再生を容易にする。支援を受けやすくするという命題に向け、6種類の手法(株式の売買、事業譲渡、会社分割、合併、株式移転、株式交換)を単独または組み合わせて行う。この中でも、会社分割は中小企業の不良債権処理に多く使われており、会社分割には、新設分社型分割・新設分割型分割・吸収分社型分割・吸収分割型分割の4つのパターンがある。会社法の施行により人的分割は廃止されたが、分割会社が取得した株式は配当等として分割会社の株主に分配できる。会社分割のメリットは、低コストで事業譲渡できること、事業を休むことなく継続して続けることができること。債務超過の会社でも会社分割ができること。税制適格会社分割の場合には、簿価移転による課税の繰延の適用があることなど、会社分割を中心に発表を行いました。
5. 民事再生手続
次に大西会員が、民事再生手続の基本的な流れについて、特に税務上裁判所の開始決定の日と、再生手続認可の日がデリケートな問題としてあること。続いて石井将治会員より、法律上の問題として、開始決定前の処置、実務上重要なことは弁済禁止の仮処分であり、これをやっておけば手形の不渡りがあっても、銀行取引停止処分にならない。申立の審理、開始決定、再生債務者に対する債権、再生債務者を巡る契約・権利関係、再生債務者財産の調査・確保、特に財産の評定は税理士が関与するところであり、処分価額で評定するのが原則であるが、事業譲渡を行う場合は事業継続価額で評価する場合がある。また、債務免除益を繰越欠損金等でカバーできない場合などは、事業譲渡をして民事再生を申請した会社は閉めてしまう清算型の民事再生が比較的多い。多い理由は、事業譲渡の手続が民事再生法上簡単にできるようになっている。債務超過の会社であれば裁判所の許可だけでできること等について発表を行いました。

続いて、私が、税務上の問題として解散した場合のみなし事業年度が平成18年度の税制改正により取り扱いが変更になったこと。債務免除益の問題として、再生計画で債務の免除時期に関する定めを行うこと。平成17年度の税制改正により、資産の評価益の計上が認められたこと。期限切れ欠損金の優先控除が認められたこと等を具体的な事例を交えて発表を行いました。最後に、大西会員より、民事再生と私的再生の事例を2つご紹介して今回の分科会での発表を終了しました。

IV.発言・質疑
1.本を読むとか以前に具体的な経験を語って頂き有難うございました。解散のところの改正は知らなかったので、大変助かりました。債務免除のところで、連帯保証人がついているのに債務免除の方向に結構流れているが、お客さんと話をしていても、連帯保証人がついていると、どうしても超えられなくなるのですが。

・裁判所で経営者の個人資産も調べられる。連帯保証を取り付けていても出せるものがない。親がいればそれも調べられる。中には、隠していて後日裁判になるケースもあるようです。

・整理回収機構の場合には連帯保証をしている人の財産調査票に資産・負債を書き、それに預金通帳等をエビデンスと添付して、できれば代理人弁護士の名前で表明保証書をつけて出すと、折り合いがつきます。

2.民事再生の事例で経営者が交代していますが、これはどういう事情ですか。また、監督委員は民事再生にはどれくらい関わるのですか。

・民事再生の形式は取っていますが、元々仕入先である債権者が経営に入りたいということであった。経営者株主分は全て減資して入れ代わったという事情があります。監督委員は申立人との間で再生計画を詰めていくのが仕事です。

3.いま民事再生の真っ只中にいるのですが、民事再生法と言いながら、金融機関との再生計画の事前根回しの中では、100%減資、現経営者の一族は退陣しろと言ってくる。民事再生はそこまで言っていないと言いながら、強行に首を突っ込んでくる。非常に困ったなという感じです。債務免除益の問題については、再生計画案の中に最終弁済終了後に債務免除を受けることとし、その間に解散をする計画を行ったが、その点が心配でした。今日来てよかったです。

4.企業再生スキームの中で、税の問題は非常に大きな問題で、国税庁へ文章で事前紹介をするのですが、事前紹介をすると、その内容がホームページ上に公開されてしまう、そうすると、債務者側にとってプライバシーと、再建の問題に関わることになり、取り下げるケースもあり、事前紹介の機能が果たされてない。税務対策上どのようなことをされていますか。事前紹介はなさるのでしょうか。

・事前紹介はしていると思いますが。最近は税理士が当局に事前紹介をすること自体をいやがっています。近畿税理士会では税理士対象の相談室も作っているみたいで、今後はそういうところに行くのではないでしょうか。

V.最後に
今回発表した民事再生を中心とした企業再生はまだまだ入口であり、税の問題を含めてもっと研究を深めていくことが必要だと感じました。

分科会の約2ヶ月前、大阪会の総会においてRCC(整理回収機構)で活躍しておられる弁護士先生の講演を聞く機会があり、その中で再生可能な企業の条件としては、本業でのキャッシュフローがあること。継続価値が清算価値を超えること。経営者・従業員が再建に関して意欲があること。株主・経営者が責任を取ると共に、情報開示を行うこと等でした。中小企業の場合には本業でのキャッシュフローを確保するのが難しい現状にあり、どうしても手遅れになるケースが多いですが、そうなる前に適切なアドバイスをすることも私達税理士の仕事の1つと言えるのではないでしょうか。

当日には、50名の会員の方に参加して頂き、貴重なご意見や、体験談をお聞きしました。有難うございました。

(いがわ・ひろゆき)


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