具体的な内容が決まり、本格的な作業に取り掛かったのは6月からでした。8月4日には予行演習としてプレ発表を大阪会で行ってからも、一部内容を変更することになり、そこから1ケ月で最後の詰めを行い、本番を迎えることになりました。
分科会当日は、発表担当者が作成した当日資料(A4版54ページ)を配布し、発表を行いました。発表内容の詳細については、税経新報8・9月合併号に掲載されておりますので、ここでは骨子のみの報告とします。 |
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1. 企業再生の手続 |
まず最初に大西正也会員が、企業再生手続のポイントについて、デューデリジェンス(適正評価:Due Diligence)の目的、ビジネス・法務・財務の3つのデューデリジェンスの内、税理士・会計士が具体的に関与するのは財務デューデリジェンスであり、これによって再生可能かどうか、再生するためには何が必要で、何を削らなければならないかを確定させる。その財務デューデリジェンスの結果を受けて、破産・清算配当率を算定する。次に、再生計画の策定と実行可能性の検討を行う。行う上でのポイントは、過剰債務の処理の決定、事業計画(収益予測)、資金計画の作成であり、特に赤字にならないように計画することが重要である。また、再建計画が実行可能かどうかの検討については再建計画を立てるに当たっての諸条件が合理的であるか、費用削減計画が実行可能であるかに留意し、特に利害関係者の調整が重要であること等の発表を行いました。 |
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2. 企業再生スキーム |
続いて大西会員が、企業再生スキームは再生会社を主体とした場合の区別として自力再生と第三者支援、制度上の観点から法的再生と私的再生に分けられる。法的再生には民事再生法と会社更生法があり、それぞれの内容・特徴点・メリット・デメリットについての発表を行いました。 |
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3. 私的再生(自力再生)の事例 |
次に楠薫会員が、実際に経験した自力再生(任意整理による再生)の事例紹介を行いました。具体的な内容についてはここではご紹介できませんが、債務超過である会社をどのような方法で清算まで持っていったのか。その過程で銀行からサービサー(債権回収会社:Servicer)へ売却された債務に関して、サービサーとの生の交渉経過の紹介、建物賃貸借契約解除等に伴う立退料の消費税課非判定、債務免除益を計上するタイミング、所得税法64条2項適用の可否、法人に対する求償権の行使の可否、連帯保証人がある場合の各連帯保証人間内部の保証債務の負担割合の問題等の発表を行いました。 |
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4. 企業組織再編による企業再生 |
休憩後、長谷井雅子会員が、企業再生を目的とした企業再編は様々なバリエーションがあるが、基本的には事業の再生を容易にする。支援を受けやすくするという命題に向け、6種類の手法(株式の売買、事業譲渡、会社分割、合併、株式移転、株式交換)を単独または組み合わせて行う。この中でも、会社分割は中小企業の不良債権処理に多く使われており、会社分割には、新設分社型分割・新設分割型分割・吸収分社型分割・吸収分割型分割の4つのパターンがある。会社法の施行により人的分割は廃止されたが、分割会社が取得した株式は配当等として分割会社の株主に分配できる。会社分割のメリットは、低コストで事業譲渡できること、事業を休むことなく継続して続けることができること。債務超過の会社でも会社分割ができること。税制適格会社分割の場合には、簿価移転による課税の繰延の適用があることなど、会社分割を中心に発表を行いました。 |
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5. 民事再生手続 |
次に大西会員が、民事再生手続の基本的な流れについて、特に税務上裁判所の開始決定の日と、再生手続認可の日がデリケートな問題としてあること。続いて石井将治会員より、法律上の問題として、開始決定前の処置、実務上重要なことは弁済禁止の仮処分であり、これをやっておけば手形の不渡りがあっても、銀行取引停止処分にならない。申立の審理、開始決定、再生債務者に対する債権、再生債務者を巡る契約・権利関係、再生債務者財産の調査・確保、特に財産の評定は税理士が関与するところであり、処分価額で評定するのが原則であるが、事業譲渡を行う場合は事業継続価額で評価する場合がある。また、債務免除益を繰越欠損金等でカバーできない場合などは、事業譲渡をして民事再生を申請した会社は閉めてしまう清算型の民事再生が比較的多い。多い理由は、事業譲渡の手続が民事再生法上簡単にできるようになっている。債務超過の会社であれば裁判所の許可だけでできること等について発表を行いました。
続いて、私が、税務上の問題として解散した場合のみなし事業年度が平成18年度の税制改正により取り扱いが変更になったこと。債務免除益の問題として、再生計画で債務の免除時期に関する定めを行うこと。平成17年度の税制改正により、資産の評価益の計上が認められたこと。期限切れ欠損金の優先控除が認められたこと等を具体的な事例を交えて発表を行いました。最後に、大西会員より、民事再生と私的再生の事例を2つご紹介して今回の分科会での発表を終了しました。 |