時潮

国税当局の下請の下請の日雇税理士
税経新人会全国協議会副理事長清家
今年9月、近畿税理士会は国税当局のアウトソーシング方式による委託事業への対応を「税務支援の枠内で対応する」とした日本税理士会連合会の方針に従い、「税務支援に関する実施規程」を改定した。それによれば、「国又は地方公共団体が行う外部委託事業を受託したもの」を協議派遣団体に追加し、「協議派遣方式」により対応することにしたのである。

すなわち、国税当局のアウトソーシングには、実態として確定申告書の作成指導などの税理士業務が含まれているため、一般競争入札で行われるアウトソーシングで営利を目的とする民間事業者が受注しても、税理士業務の「無償独占」を堅持するために、税理士(税理士法人)が従事すべきだとの考えによる。そして、これを受注の下請と捉えるべきでなく、「税務支援」の枠内で対応する必要があるとしている。

しかし、アウトソーシングとは業務の外部委託のことであり、世間一般では外注、下請を意味する。これを「下請と捉えるべきでなく」といっても、これはどう考えても下請である。このアウトソーシングに「税務支援」で従事させられる税理士には、一体どんな使命が負わされるのだろうか。こんなことで課税当局とは独立した税理士制度が、国民のための、納税者のための税理士制度として発展するのだろうか。

今年から税理士業務の「無償独占」を堅持するためにという理由で、所得税や消費税の庶民増税で激増する納税者対策として、税理士会の全会員に「税務支援」が義務づけられ、多くの会員が確定申告時期に「税務支援」に従事した。

「税務支援」とは、税務援助(小規模納税者に対する税務支援)と税務指導(小規模納税者以外の者に対する税務支援)から成り、具体的対象者を次のように定めて実施されている。

・税務援助対象者
経済的な理由により税理士又は税理士法人に業務を委嘱することが困難な者
税理士又は税理士法人関与のない事業所得者、不動産所得者及び雑所得者(年金受給者を除く)
前年分所得金額(専従者控除又は青色特典控除前)300万円以下の者
上記の者が消費税の課税事業者の場合、基準期間の課税売上高3,000万円以下の者

・税務指導対象者
税理士又は税理士法人関与のない者
本会が指導を必要と認める納税者として、理事会の議を経て定める者(例えば小規模納税者以外の事業所得者、給与所得者、年金受給者など)

そして、この「税務支援」に従事する税理士には17,000円程度の日当が支払われる。国税当局のアウトソーシングは民間事業者が落札する場合も考えられる。その場合、落札した民間事業者から税理士会が下請けをして、「税務支援」で税理士を「一日ナンボ」で派遣する。

派遣される税理士は「税務支援」で従事を義務づけられ、国税当局の下請の下請の日雇税理士にされるのである。税理士業務の「無償独占」を打ち破った先から発注される業務を、「無償独占」を堅持するためだとの理屈で会員に従事を強制する。こんな理不尽な「無償独占」「税務支援」があっていいのだろうか。

今年3月、財務省は「国税関係業務・システム最適化計画」を決定した。この「最適化計画」のイメージ図が、全国税労働組合近畿地方連合会の機関紙「全国税きんき」に掲載されている。それによると、税理士の下請化も計画されているようである。

そして9月21日、大阪国税局は「公的年金等受給者に対する確定申告説明会に関する業務委託」を、一般競争契約で入札公告をホームページに掲載した。(昨年はこの委託業務を(財)日本税務協会大阪支部が2,940万円の随意契約で受託し、税理士会が17,000円程度の日当で税理士を推薦するやり方で実施された。)

(せいけ・ひろし:大阪会)



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