消費税率引き上げの法案を2007年の通常国会へ提出する考えを谷垣財務大臣が改めて強調したと1月14日の新聞が伝えた。与党税制改正大綱「新しい時代に相応しい税制の構築を目指して」の中で「2007年度を目途に、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく、取組んでいく」と明記され、実施時期はともかく消費税率を引き上げることについての発言がはばかることを知らずにみだれ飛んでいる。
このレールはいつ敷かれたのかと思い起こしてみれば導入の時からともいえるが、2000年7月の膨大なページにおよぶ政府税調答申、2002年6月の基本方針を経て、2003年6月の中期答申「少子・高齢社会における税制のあり方」で消費税率の「二桁化」が明記されたときにスタートをきった。所得税については基幹税としての機能回復に取組む必要があるといい、一方消費税については基幹税として定着してきた、だからもっと役割を高めていく必要があるという論理だった。
一体いつからということは明記されなかったが、「2010年代のできるだけ早い時期にプライマリーバランスの均衡化を達成することがまずもって重要」とうたっており、実施時期を解くカギとなっていたのだった。
しかし、そもそもこのプライマリーバランスを均衡化しても問題の解決にはならないと思われる。プライマリーバランスとはいわゆる一般会計における基礎的財政収支のことをいっているが、具体的に2006年度予算財務省原案を例にとると、11.2兆円の赤字。一般会計の規模は79.6兆円で、歳入は税収、その他収入49.7兆円、国債発行額29.9兆円となっており、歳出は国債費以外の歳出60.9兆円、国債費18.7兆円。基礎的財政収支は、国債費発行以外の税収など歳入と国債の元利払い費(国債費)を除いた歳出の差となるので、49.7兆円−60.9兆円=▲11.2兆円となる。あるいは、国債費と新規国債発行額との差ともいえる。
国の借金残高をこれ以上増やさないためにまずは収支を均衡化させるというのがプライマリーバランス論のはずである。ところが国債費は国債の元金返済と利息の支払の合計なので、たとえ均衡化したとしても借入金残高は増加してしまう。2006年度予算でいえば利息分が赤字額に追加されて借入残高が増える計算だ。
それでも財務省は、赤字が大幅に改善されたといい「徹底した歳出削減など構造改革の成果」と胸を張ったそうである。
収入に見合った支出というのは家庭の財布ならいざ知らず、国家予算ではいかがなものかと思っていたら、財政学の基本教科書では「財政の原則」は、「出ずる量って入るを制す」つまり「量出制入」が常識ということだ。
財政の収入は国の決定により税金として強制的に徴収される。だからこそ、必要な公共サービスをまず決めて、それをまかなうだけの収入を調達するのが「財政の原則」なのだ。
いま、「小さい政府」のための「改革」、即民営化という図式があり、一方では増大してしまった過去の赤字のツケを後始末するために若者から高齢者までみんなで負担し、ともに支えようといわれ続けている。財政再建のためには増税やむなしという言葉が耳からはなれない。しかし、財政は誰のためにあるのかと基本に立ち返ればおのずと方向がみえてくる。
2006年は新人会内において改めてこの国のあり方を論議し、国民負担のあり方、あるべき税制を提言していきたい。いまあるフレームにとらわれることなく活発な討議と外へ向けての発信する年と位置づけたい。
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