時潮

企業倫理と石油価格
税経新人会全国協議会副理事長山本友晴
アメリカのブッシュ政権がしかけたイラク戦争により、石油価格が高騰している。燃料の値上げで運送関係はもとより農漁業などを含め多くの企業が被害をこうむっている。消費生活への影響も大きくなってくるのは必至と言える。

先日の新聞報道によれば新日本石油が前年同期比41%増の純利益を計上しているという。「新日本石油が4日発表した2005年9月中間期の連結決算は、純利益が818億円と前年同月比41%増えた。原油価格の上昇で、期初の割安な在庫が原価を押し下げた。この効果を除くとほぼ前年同月並だった。売上高は20%増の2兆7,010億円。燃料油販売数量は2,699万キロリットルと1%増えた。原油高を反映し製品単価が上がった。経常利益は60%増の1,500億円」(日経2005年11月5日付)

燃料油販売数量は1%増、売上高は20%増との事である。このように大手企業は製品単価を上げる事で原料値上げに容易に対応できる事が分かる。

アメリカでは、エクソンモービルをはじめ大手石油企業が莫大な利益を上げているとの事で、利益還元要求が出ているようである。

新日本石油のグループ理念には、E:公正さ・誠実さを重んじる、N:新しいアイデアでのビジネス創造、E:地球環境との調和、R:人々との絆を大切にし快適で豊かな暮らしに貢献する、G:グローバルな活動、Y:ひとりひとりのお客様へ満足を届ける、とある。

1970年代の石油危機において、トイレットペーパーの品薄を筆頭に便乗値上げが蔓延し物価の高騰で庶民は大打撃を受けた。あの教訓から便乗値上げが悪である事が社会に定着している。

今回の新日本石油の利益計上は、便乗値上げではないが、価格設定の時間差により益が出たものである。大手(独占企業)は価格の操作で危機への対応が容易であることを考えれば、値上げ時期は慎重にすべきである。もちろん100%差益が出ないようにする事は不可能であるが、このような利益については、企業は一定の基準を設けて社会に還元するようにすべきである。

企業理念は絵に書いた餅でなく実践する事で生きたものとなり、社会に認められる企業倫理が構築されて行く。この企業倫理が如何に必要であるかは雪印、日本ハムの事件などから教訓としてあるはずである。

新日本石油のこれからの行動に注目する事はもちろん、私たち自身も社会に生きる人間として倫理観をもった行動を心がけたいものである。
(やまもとともはる、九州会)

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