時潮

「改革」がすすめば貧困化がすすむ
税経新人会全国協議会副理事長清家
先の総選挙で、小泉首相は「改革を止めるな」「郵政民営化は改革の本丸だ」と声高に叫んでいた。小泉首相の「改革」とは一体何なのか。国民に何をもたらすのか。この「改革」の中身と「改革」の行き着く先を明確にしないまま、「改革」は日本国民にとって何か希望があり、好ましいことであるかのような幻想が振りまかれた。

そして、選挙が終わった。投票日当日の午後8時頃から、テレビ各局は選挙特番を流した。自民党圧勝の開票速報の合間に、あるテレビ局は日本の貧困化問題を取り上げ、テレビに映し出された貧困率のパネルに私は釘付けになった。

それによると日本の貧困率はOECD24ヵ国でメキシコ、アメリカ、トルコ、アイルランドに次いでナント第5位、解説者は「日本が他の国に比べて深刻なのは、貧困率が拡大していることです」「改革とはこういうことなんです」とコメントしていた。要するに「改革」がすすめば日本の貧困化がすすむということを伝えていたのである。

投票後にこんな重要な報道をするのなら、選挙前、選挙中にもっと全国民に分かりやすく大々的に報道すべきだ。それがマスコミの良識ではないだろうか。

橘木俊詔京都大学大学院教授は「メキシコやトルコは中進国。いってみれば日本は、先進資本主義諸国のなかで3番目に貧困率が高く、しかも94年の日本の貧困率は8.4%だから、ここ10年で約2倍になった」と指摘している。

若者の失業率は10%を超え、加えてフリーターと呼ばれる平均年収140万円ほどの不完全就業者が200万人とも400万人ともいわれ、生活保護を受けている世帯数も95年の60万世帯から04年には140万世帯を超えるほどに急増している。

小泉首相の「改革を止めるな」とは「貧困化を止めるな」ということである。「改革」の現実は一部の特権階級をますます富ますために、多くの日本国民を貧困の淵に落とし込んでいる。「改革」の一環として、1980年代半ばからすすめられている応能負担破壊、弱肉強食の「税制改革」も、貧困化の大きな要因になっている。

この路線上にある税率アップの消費税増税、サラリーマン増税といわれる所得税の庶民増税が、「改革」の名のもとに今まさに強行されようとしているのである。貧困化をすすめる小泉「税制改革」に、警鐘を打ち鳴らさなければならない。
文責せいけひろし
OECD24カ国の貧困率
注) 貧困率は、可処分所得が全人口の中央値の50%以下しかない人の割合。世帯単位 の所得を個人単位に推計し直して算出したもの。1999年ないしは2000年のデータ(一部、2001年、02年を含む)による
出所)OECD「90年代後半のOECD諸国における所得格差と貧困」(2005年2月)

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