時潮

憲法を主権者としての国民の立場で学ぶ
税経新人会全国協議会理事長平石共子
「みなさん、あたらしい憲法ができました。そうして昭和22年5月3日から、私たち日本国民は、この憲法を守ってゆくことになりました。」

日本国憲法の施行後まもなく、中学1年生向けの社会科用教科書として発行された『あたらしい憲法のはなし』の書き出しである。

手許にあるのはむろん復刻版として文部省に許可を得て出版されたものであるが、15項目、52ページにも及ぶ。義務教育で憲法をどこまで学習したかは最早記憶にないが、憲法だけで1冊ということはなかったはずだ。
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もう少し読み進むと「国をどういうふうに治め、国の仕事をどういうふうにやってゆくかということをきめた、いちばん根本になっている規則が憲法です。
…中略…
もし憲法がなければ、国の中におおぜいの人がいても、どうして国を治めてゆくかということがわかりません。それでどこの国でも、憲法をいちばんたいせつに守ってゆくのです。国でいちばん大事な規則として、これをたいせつに守ってゆくのです。国でいちばん大事な規則は、いいかえれば、いちばん高い位にある規則ですから、これを国の『最高法規』というのです。」とある。

記述が統治機構中心となっているのは、当時の国民の関心がそこに集中した現れだろうという。戦争が終わり平和で民主的な国であることが一番の願いであり憲法がどう機能するのかが重要だったのだ。その当時中学1年生に憲法教育が施されたことにこの憲法を広め定着させたいという文部省の意気込みが感じられる。

その後、教科書は民間で編集したものを検定という手続きを経て発行されるようになる。これは画一的な国定教科書から多様な教科書の発行ができるようにとの意図であったが、教科書検定の強化・右傾化が進む。しかし、「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書の採択は9月6日現在で0.4%にとどまっているとのこと。(子どもと教科書全国ネット21集計)

「憲法とは何か」という問いに対して、まず「国の最高法規」であると答える。これは間違いではないようであるが、近代憲法の特徴をつけ加えなければ正解とはいえない。前述の新しい憲法のはなしの引用をもう少し厳密にいうと、憲法とは「国家権力の行き過ぎをコントロールする(縛りをかける)」という機能をもっている。
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総選挙のさなかテレビの討論番組で司会者が、「憲法がそろそろ定年を迎えるという人がいるが、どう考えるか」という質問を候補者に向けたのにはおどろいた。あと2年あまりで施行後60年を迎えることと、定年とは似て非なるものではないかと思う。

選挙の結果、与党3分の2議席以上の圧勝を背景に、もう9月14日に衆議院に憲法常任委員会の設置の話が飛び出している。

安穏としてはいられない。主権者としての国民の立場で憲法を学び、みんなで話し合おう。憲法9条を「変える」か、「変えない」か、という○×を突きつけられる前に。
文責ひらいしきょうこ

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