(1)「指針」の目的は、「中小企業が、計算書類の作成に当たり、拠ることが望ましい会計処理や注記等を示すものである。このため、中小企業は、本指針に拠り計算書類を作成することが推奨される。……中略……とりわけ、会計参与が計算書類を作成するに当たって拠ることが適当な会計のあり方を示すものである」と総論で述べている。
この「指針」の適用範囲は以下に述べる理由から、会社が自ら選択した機関設計の一つである会計参与設置会社において、会計参与が計算書類を作成するときに適用する会計指針であることに限定して適用すべきである。
(2)「指針」の適用対象は、「証券取引法の適用会社やその子会社及び関連会社、商法特例法上の大会社とその子会社を除く株式会社」(一般の中小会社が該当:当会が注記)としている。また、「有限会社や合名会社又は合資会社についても、本指針に拠ることを推奨し、本指針の適用対象をすべての会社である中小企業」を対象としている。
「中小企業」という表現は、個人企業を含むものと解され、誤解を与えるので、この「指針」の表題は「中小会社」と名前を変更すべきである。
(3) 選択肢が狭まり、作業負担増となる
会計処理の各論は、企業会計原則を意識した指針内容になっている。これを基準にして計算書類をまとめていく作業は、従来の税務を意識した会計とは大いに異なり、細部にわたり注意が必要となることは必至である。企業会計原則を意識するということは、会計処理の選択により幅のあった相対的な真実性が、より絶対的な真実性に近づいた会計をまとめていくことを意味する。
注記項目もかなり増え、その分だけでもデータを確保する作業時間が必要となり、計算書類を作成する時間は格段に増えることになる。しかも、後日の争い事を意識して文書で会計業務の軌跡を残す(例えば、会計調書などを確保する)という負担が増えることになる。
「指針」にいう会計処理の各項目は、時価と取得原価の差額の処理及び簿外負債の会計への計上を強く意識していることがうかがえる。確かに、会社の内部機関として、会計専門家としての会計参与業務を遂行する場合には、従来の税務申告をするための計算書類を作成、代行するという業務とは大きく異なり、計算書類作成当事者としては責任が伴うので統一した指針の存在が必要である点については同意する。 |