新人会記事

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2005年度税制改正批判
2005年4月1日税経新人会全国協議会

1.定率減税の縮小をはじめとした国民大増税に反対する

平成17年度所得税法等の一部を改正する法律案が3月30日参議院で可決され国会を通過した。
与党税制大綱では「わが国は、年金、医療、介護などの制度の整備もあって、世界にまれな長寿社会の実現を含め、国際的にみても最高の生活水準を実現している」と自負しているが、長引く不況のなかでの年金、医療、介護制度などの相次ぐ改悪と庶民大増税で苦しんでいる国民の実感からは全くかけ離れたものとなっている。

2005(平成17)年度の税制「改正」は定率減税の縮小が中心となっているが、今後の「改正」の方向として、いわゆる三位一体改革の一環として、所得税から住民税への制度的な税源移譲とあわせて国・地方を通ずる個人所得課税のあり方の見直しを行うとして、所得税・住民税の大増税が計画されている。さらに、2007(平成19)年度を目途に、社会保障給付や少子化対策に要する費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現するとして、消費税の二桁税率への大幅引上げも計画されるなど、戦後最大の国民大増税が実施されようとしている。

2.大企業、高額所得者の租税負担の軽減に反対する

1980年後半からの税制をめぐる流れは、1 所得税負担のフラット化、2 法人税の軽課、3 消費税の導入と基幹税化など、大企業・高額所得者の租税負担を、勤労国民や中小企業にシフトする為の「改革」であった。また、近年はこれに加え、大企業の多国籍企業化とリストラを促進する税制が推し進められている。

2000年7月の税制調査会の中期答申「わが国税制の現状と課題−21世紀に向けた国民の参加と選択」は、これらの「改革」の総仕上げをめざし、「公平・中立・簡素」「租税を国民皆が広く公平に分かち合う」などをスローガンに個人所得課税、消費課税、相続税課税などについて庶民大増税の方向を打ち出した。

以後、消費税の免税点の引き下げ等・総額表示の強制、法人事業税の外形標準課税の導入、金融・証券税制の見直し、土地税制の見直し、配偶者特別控除(上乗せ部分)の廃止、公的年金控除の引き下げ、老年者控除の廃止などが次々と実行されてきた。また、連結納税制度、組織再編税制も取り入れてきた。

大企業優遇、中小企業・庶民いじめの経済政策、税制「改正」により、景気は二極分化し、大企業が史上最高の利益を上げているにもかかわらず、中小企業の倒産・廃業が相次ぎ、深刻な生活苦にあえいでいる国民が増えている。

3.定率減税の廃止は家計に大打撃を与え、景気をさらに悪化させる

与党税制大綱では「企業収益が大幅に改善し、設備投資も増加している。雇用情勢も着実に改善しており、消費者マインドの改善もあって、個人消費は緩やかに増加している」と述べているが、失業率の若干の低下は、パートやフリーターなど不安定雇用の急増が完全失業率を押し下げているわけで、雇用情勢が「回復」したものではない。また、個人消費は2004(平成16)年10月の消費支出が前年同月比0.1%増とはなったものの、これは中国特需や輸出効果など一時的なもので、11月から減速感が広がっている。与党や財界のなかからも、景気回復が「本物」でなく、長続きしない恐れから、慎重に行うべきという意見が相次いで出されている。

定率減税の廃止(総額3兆3,000億円)は、家計に多大の負担を強いることとなり、特に中低所得階層に対する課税強化となり、ひいては、個人消費全体を冷え込ませることにつながる。

定率減税は1999(平成11)年、所得税の最高税率の引き下げ(50%から37%)、法人税の基本税率の引き下げ(34.5%から30%)、とともに恒久的減税として実施され、「景気対策」の一環でもあった。また、個人所得課税及び法人課税の在り方についての抜本的な見直しを行うまでの間の措置として実施されたものでもあった。

個人所得課税及び法人課税のあり方について、抜本的な見直しもされないまま、また、法人税の基本税率、所得税の最高税率を元に戻すことなく、定率減税だけを廃止するというのは理論的にも説明がつかないことである。既定の路線である「所得税・住民税については庶民大増税、法人税については軽課」のもと実施されようとするものであり、私達は到底受け入れることはできない。

4.本来あるべき、応能負担原則に基づく民主的税制を求める

租税は、料金と異なり対価性がなく強制的に負担を強いられるものであり、国民や住民が人権の保障と実現のために行政が行うべき施策を享受するためにある。憲法30条(納税の義務)、84条(租税法律主義)にその根拠をおき、その使途は憲法13条(個人の尊重)、14条(法の下の平等など)、25条(国民の生存権、国の社会保障義務)などの実現に求められる。

また、租税は行政の公共性の享受がゆえに強制力があり、租税の負担の根拠となっているが、租税の負担の根拠がその負担の方法を決定するものではない。租税を負担したかどうか、どれだけ負担したかということと行政をどれだけ享受したかは法的には無関係である。

社会権の発達した近代国家において、まして、先に述べたような憲法を持つわが国においては、税の負担は能力に応じた負担でなければならない。

この間の税収の低迷は、長引く不況の影響だけではなく、総合累進課税の破壊と法人税の聖域化による減税の結果である。

私たちは、民主的税制論の立場から、超過累進税率による所得課税を税制の中心に置くことを求め、応能負担原則に反する税制改革に強く反対し、引き続き民主的税制の構築に向けて努力する。
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