時潮

財政政策の失政責任を明らかにし、応能負担原則の税体系に戻そう
税経新人会全国協議会副理事長国岡 清
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アメリカの要求に屈してきた歴代自民党内閣
財政赤字の累積719兆円もの国・地方の長期債務残高(04年度末)は、財政政策の失敗の結果です。国内総生産(GDP)比143%は、最悪といわれたイタリアを飛び越えて世界一の借金国です。一般政府の債務残高の対GDP比は、1991年以降右肩上がりで、97年カナダを、99年イタリアを抜いて独走し、ぶっちぎり状態で急速に悪化しています。

何故、こうも急速に悪化したのでしょうか。その根本原因は、1970年代後半のアメリカによる「内需主導型」経済構造への転換要求にあり、以後、小泉内閣までつながります。77・78年サミットでアメリカが「日独機関車」論を展開し、両国が対米輸出を抑制し、内需主導型で世界経済を牽引することを主張したのです。当時の福田内閣は、内需主導による7%成長をアメリカに公約し、78年度当初予算の公共事業費は前年比34.5%増と驚異的に伸び、国債依存度は小泉内閣並の38.8%に飛躍します。財界は「内需」を無条件に大型公共事業へと直結させ、ここから世界にもまれな「無駄と環境破壊のゼネコン国家」(「現代を探求する経済学」石川康宏著)が生まれます。

85年プラザ合意でアメリカはさらに急速な「内需主導型」への転換を求めます。中曽根内閣の「民活政策」のもと、86年「前川レポート」が輸出指向型から「内需主導型の経済成長」へ転換を宣言します。87年に6兆円の公共投資を追加する「緊急経済対策」を出し、アメリカの要求に応えるべく「ゼネコン国家」の財源づくりに消費税導入を画策します。89・90年の「日米構造障壁協議」(6分野240項目)は、日本の公共事業拡大を求め、630兆円の「公共投資基本計画」が日米資本の意向のもとに作られます(第二の占領政策ともいわれます)。93年日本の公共事業費は50兆円突破まで一直線に拡大します。

6度にわたって景気対策が繰り返され、60兆円超の資金を投入し、国債が大増発され、国債残高は92〜96年度で一挙に68.4兆円も増えました。しかし、期待した経済効果は現れず、財政赤字だけが膨らむ結果になります。ゼネコン型公共投資の拡大理由はいつも「景気対策」ですが、「財政制度審議会報告」(95年12月)が、「欧米諸国において、不況期にいわゆるケインズ的な拡張的財政政策を行っている国はなかった」と認めるごとく日本の公共事業投資は異常なものでした。97年橋本・クリントン会談での「規制撤廃・競争政策に関する日米合意」以後、現在まで毎年政策実施の進捗度合の点検を受けています。

02年「日米投資イニシャティブ報告書」は、不良債権処理を急がせ、「産業再生機構」を使いアメリカ資本に売却せよと要求しました。03年小泉首相は今後5年間で対日直接投資の倍増を宣言し、3月の「対日投資会議」で具体策を発表し、11月の日米財界人会議は計画の実行を強く求め、「構造改革特区」の医療に株式会社参入など、アメリカ資本による対日参入条件が急速に整備されてきました。会社法制現代化中の「合併対価の柔軟化」(三角合併の許容)などは、その具体化であります。政府の審議会には、財務省3名、経済産業省6名など計15名の外資系企業が食い込み、政策決定に深く関与するまでになりました。
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応能負担原則の税体系に戻すことが緊急の課題
97年11月橋本内閣は、「財政構造改革法」を成立させます。この「改革法」は社会保障費等社会的支出あるいは国民向け支出の削減に全力投球するものです。橋本内閣が消費税率引上げで5兆円増税、所得税特別減税を中止して2兆円増税、医療保険改悪で2兆円負担増の9兆円増収強行策を実施し、日本経済にダメージを与えたことは周知の事実です。しかも、「財政構造改革法」は、歳出と公債について規定しているだけで、歳入の根幹である税制については何ら規定していません。税制は自民および政府税調の守備範囲だから勝手にしてくれという無責任なものです。税制・税収問題を抜きにしての財政構造改革法というのは明らかな欠陥法です。

「所得、資産、消費」課税のバランスがとれた税制構築論の趣旨は、大企業や大資産家の負担軽減を中心として所得課税、資産課税の比重を減らし、一般庶民の負担を重くする消費課税の比重を増やすというものです。89年消費税の導入と引換えに所得税の最高税率引下げ、法人税の税率引下げが行われた結果、導入後の消費税税収が16年間で148兆円、同時期の法人税減収が145兆円ということは消費税が法人税の減税財源として使われたともいえます。現行税制が所得税や法人税の税率を大幅に引下げた結果、財政の自動安定化機能(景気が良くなれば税金として増収できる)が弱まりました。

「所得、資産、消費」課税のバランスといいますが、所得が稼得されなければ資産も手に入らず、消費もできません。消費税重視への移行は、価格転嫁力のある大企業の負担を減らし、中小零細企業と国民一般への大増税につながり、生活破壊への道を拓くものになります。応能負担原則に基づく所得を重視した超過累進課税の税体系とこれを補完する個別消費課税体系に戻すことが緊急の課題です。

文責くにおかきよし

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