税理士会は、国税庁の要請を受けて、毎年所得税確定申告期に会員税理士に小規模納税者に対する税務援助を強制的に行なわせていますが、これについて、会員の中に、「われわれ税理士は行政の下請機関なのか」という不満や批判の声がありました。
この会内からの不満や批判に対して税理士会幹部の口から説かれた言葉は、「税理士業務の公共性」と「税理士業務の無償独占」ということでした。つまり、税理士業務は、自主申告納税制度のもとにおける税金の申告納付という国家財政に直接役立つ重要な「公共性」をもった仕事であり、また税理士以外の者は無償でもできないという強い「無償独占権」が国家によって与えられ、この恩典によって税理士の職域が守られているのである、その意味で税理士は税務援助に奉仕すべき義務がある、ということでした。
私たちは、この税理士会幹部の「無償独占」についての発言は、冒頭の国税庁長官のあいさつと非常に似通ったものがあることに気づきます。
しかし、この国家財政に役立つ仕事だから無条件に「公共性」があるとする税理士会幹部の発言には、私としては非常に疑義のあるところですが、それはさておき、いまここで問題にしたいのは、この業務の「無償独占権」です。繰返しになりますが、これは、既に述べたように、なにも税理士を優遇する特典として与えられた権利ではありません。国家がこの税理士業務を監督し規制するという国家の必要から、税理士以外の者がこの業務を行うことを禁じた結果、生じたものに過ぎないのです。
|